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アメリカン・ビジネス
(連載エッセイ) |
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アメリカン・ビジネス: 工場建設の話など、貴重な経験を紹介中。 |
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10. 米国での工場建設 (ターンキー・プロジェクト) 第4話
日本からやってきたプロジェクトマネジャーは、百戦錬磨の兵たちですから、クリティカル・パスの理論などは百も承知です。従って、私もそう心配はしていなかったのですが、春ももうそこまで来ており、工事は必要な現場のフォアマンやワーカーを集めて、仕事全体をまとめられるコントラクターを雇わなければならない段階に来ていました。そんなある日、私は、メンフィスの東
150マイルくらいの町に事務所のある A社からオファーをもらうために一泊の予定でメンフィスに飛びました。空港から
A社のある町までは、車で 2時間半くらいの距離ですが、メンフィスの空港には、A社の営業部長が夕方というのに出迎えに来ていました。そして、なかなか洒落たジャパニーズ・レストランで夕食をご馳走してくた後、ホテルまで送ってくれました。次の日は、早朝から資料のレビューを始めましたが、数十億円の商談ですから、どちらにも気合が入ります。打合せが長引き、結局時間通りには終わらず、空港までは
A社の自家用飛行機で送るのでぎりぎりまで打合せを続けよう、ということになったのです。
打合を終えて、その町の小さな飛行場に着くと、6人乗り
くらいの大きさだったでしょうか、双発機の飛行機が待っていたので、それにすぐに乗り込みました。飛行機は、すぐに離陸の態勢に入り滑走路を加速し始めましたが、すぐにエンジンの焦げたような臭いがしたと思うと飛行機は減速し始めました。滑走路の終わり近くまで行って飛行機は何とか停止しましたが、もう少しで、大変な惨事になるところでした。結局、車で空港まで移動し、何とか最終便でニューヨークに戻ることは出来ました。
同じような打合を幾つしたことでしょうか。それでも、それから 2-3週間後には、このプロジェクトのマネジメントをすることになった
H社と建屋の建設に係わる契約を結ぶ運びとなりました。そして、すぐにプロジェクトのスケジュールに関する打合が持たれ、マイルストーン
(Milestones) の打合が持たれました。契約を結ぶにあたって最も大切なことの一つが、このマイルストーンの設定です。もちろん、仕事のスコープ、スペックや双方の権利と義務について契約書には細かく明記されるわけで、その内容も重要ですが、何時までにどこまでのスコープの仕事を済ませるかという事を決めることが非常に大切で、それなしには、工事に遅れや問題が出ても有効なアクションが取れません。下請けの作業状況は、常にマイルストーンに対して評価し、遅れが出ないように具体的なアクションを常時取って管理しなければなりません。
最初の大きなマイルストーンは、基礎のコンクリート打ちの完了です。あまり温度の低い日には出来ない仕事ですから、その作業が何時開始できるかという事が、この作業の完成の時期に大きく影響します。そんなことで、天気の様子が、この時期には随分と気になりました。この頃には、日本からの派遣者の数も
5-6人にまでなっていたでしょうか。
ところで、この工場は、バージニア州の Norfork という町の空港から車で 30分くらいのところにある町に建てられたのですが、近くには、住宅地もあれば、モールのような商業地域もあり、そこには京都というジャパニーズレストランがありました。紅花風の鉄板焼きセクションのあるお店で、日本から派遣されてきた人達の中には、このレストランで夕食をするのがほとんど日課のようになっていた人も多くいました。そうした人は、昼食もこの店から弁当が届けられるといった具合です。ピーク時には、30人位の工事関連の派遣者が来ていましたから、当時はこのレストランの売上アップに大変貢献したはずです。大体、私の経験では、日本人の二人に一人は、日本食でないと駄目というタイプのようです。(この続きは、次回)
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