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アメリカン・ビジネス
(連載エッセイ) |
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アメリカン・ビジネス: 工場建設の話など、貴重な経験を紹介中。 |
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8. 米国での工場建設 (ターンキー・プロジェクト) 第2話
プロジェクトがスタートして、まず、始めにしなくてはならなかったことは、地元の設計会社の選定だった。工場の設計を完成し、それを認可してもらうためには、アメリカの
CE (Certified Engineer) のスタンプが必要になる。また、アメリカの標準
(standard) や規準 (code)、そして、規制 (regulation) などは、日本と異なるから、日本で作成した図面は全てレビューし、必要な変更や調整をするが、ただ、法的に必要な変更、調整をするがけでなく、アメリカで工事をするにあったて最も合理的な設計になるような変更も当然必要になる。また、建屋の設計などは、アメリカで建設するのにもっとも合理的なものにするために、条件を与えるだけで、すべて、この設計事務所で設計してもらった。さほど高度なノウハウは必要としないが、途中で設計変更が出始めると、それを手早く処理できる能力が重要になってくる。そうしたことで、能力があり、小回りの利く設計事務所を選定することは、非常に重要な課題であった。
建設工事を始めるには、許可 (Permit) が必要だったが、そのために 市の Building
Code の規制に合わないものを例外的に許可してもらうようなことも必要になった。基本的に、建物や駐車場などは、市の
Building Code に合致したものでなければならないが、それでは工場がどうしても建設できない時などには、例外的に
Code に合致しない設計でも、許可してもらうわけだ。その許可のお願いは、市議会で許可申請案として取り上げられ、審議されて、可決されなければ
OK にはならない。そうした作業にも、地元の設計事務所の力が必要だ。また、危険物を扱えば、消防署の許可が必要だし、作業環境に影響する作業場の設計は、すべて、OSHA
(Occupational Safety and Health Administration)
の規制をクリアーしなければならないなど、様々なデザイン・レビューと変更が必要になってくるわけだ。加えて、保険料を低くするためには、保険会社の低い保険料率が適用されるような設計になっていることも必要になってくる。当然、コストダウンのためには、アメリカの標準品をなるべく多く使う必要がある。従って、日本の工場のコピーを建設するといっても、簡単なことではない。
さて、設計事務所の選定が済むと、次にしなくてはならないのが、土木工事、建屋の建設工事の発注、次いで、電気、機械工事の発注となる。もちろん、そうしたことをしている間に、機器の調達の仕事なども並行して進めて行く。また、オペレーションで必要になる原料のメーカー選定の仕事の手伝いをしたり、色々な仕事が同時進行させた。いずれにしても、こうした仕事をどのように業者にやらせるかが問題である。建物の工事は、その専門業者にやらせれば良いし、電気工事は電気工事専門業者が居る。しかし、建物、機械
(ダクト・配管など) 工事、電気工事をまとめてやれる業者に発注することも出来る。細かな単位で発注するか、大きなまとまったもので発注するかの選択肢があったが、設計が済んでいなければ、その部分の発注は極めて難しくなる。従って、発注できるものから業者に発注して行くという方法を取り、取りあえず、土木工事のビッドをすることにした。そうして、土木工事のビッドのふたを開けると、やはり、思ったよりコストが高く、最初からあまり良いスタートではなかった。
それでも、そうした作業を進めている内に、市の経済開発局の援助もあって、建設工事の許可が下りた。そして、土木工事の業者選定、発注など工事を着工するのに必要な手続きも済んで 何とか、待望の地鎮祭
(Ground Breaking Ceremony) の日を迎えた。 > 続きは、こちら |
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