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アメリカン・ビジネス
(連載エッセイ)
1.
はじめに
2.
工場用地選定調査 - 1
3.
工場用地選定調査 - 2
4.
工場用地選定調査 - 3
5.
米巨大資本とのJV - 1
6.
米巨大資本とのJV - 2
7.
米国での工場建設 - 1
8.
米国での工場建設 - 2
9.
米国での工場建設 - 3
10. 米国での工場建設 - 4
     
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アメリカン・ビジネス: 工場建設の話など、貴重な経験を紹介中。
 
2. 工場用地選定調査 第1話

工場用地の選定なんてどんな調査をして、何を基準に行うのかと思う方も少なくないでしょう。結構、色々なノウハウが必要とされる仕事である。工場用地選定の基準は、工場のオペレーションで重要なコストにかかわる各種情報以外に、人材確保、専門業者やサービスの有無、組合化しにくい環境、交通の利便性、住宅・教育環境などが主なポイントになるが、コストと言っても、様々なコストが考えられる。大きなものは、輸送費、光熱 (電力) 費、人件費、工場建設費、税金などだ。当時は、あまり気にしていなかったが、気象や水質などが、後に、オペレーションコストに影響してくることも分かった。

さて、こうした調査には、所謂、一次情報 (Primary Data) と二次情報 (Secondary Data) の両方を入手することが要求される。一次情報とは、現地に行って直接見たり聞いたりして入手する情報であり、二次情報とは文献やニュースソースなどから間接的に入手する情報だ。通常は、二次情報を入手、分析して、どんな一次情報が必要になるかを判断し、現地調査に入るものである。もちろん、一次情報を入手してから、さらに、二次情報の入手をすることもあるが。

1980年代後半は、少し日本語のワープロやスプレッドシートが普及しはじめた頃だが、まだ、インターネットのない時代だった。調査に図書館通いが不可欠だった。それでも、コンピュータのデータベースサーチのサービスを提供する会社が幾つかあり、A はロッキード社の提供する Dialog というシステムを良く使っていた。電話回線経由でプロバイダーのサーバーに直接パソコンをつなぐのである。使用量に比例して、費用が発生するシステムで、そのために月に $500 くらいのフィーを A は払っていた。基本的には、新聞、業界紙、雑誌などの記事のインデックスを見て、これはと思う記事があれば、オリジナルの記事を見てみるという作業がメイン。オリジナルの記事を幾つダウンロードしたかでフィーが決まるというシステムで、むやみに参照していれば 後で高額な請求書がくるということもあり、どの記事を参照するかは、勘の見せ所だ。アメリカでは、日本以上に、沢山の地方新聞や発行物があるから、こうしたデータベースサーチは貴重な情報源になった。

問題となるのは、一次調査だが、幸運にも当時は色々なリソースを利用することができた。まず、各州にある経済開発局とでも言うか、Economic Development Department といった機関である。当時 A は、そうした州の担当者にお世話になっていた。そんな仕事を続けていると、担当者とは緊密な関係になり、そうした人達が A のオフィースのあったニューヨークに来るようなことがあれば、必ず、食事をご馳走していた。ゴルフを一緒にしたりもした。また、そうした人達は、地方の経済開発に携わる人達とネットワークを持っていたから、そうした人達をを基点に A のネットワークもどんどん広がった。地方で経済開発に携わる人達とは、商工会議所、市役所、電力会社などの関係者である。アメリカの電力会社は、日本と違い、極めてローカルで規模も比較的小さなものである。当時は、約 600の電力会社が全米にあるといわれていた。従って、電力のコストも地方により、かなりの格差があり、電力コストの高い所を選んでしまえば、1年間ですぐに 100万ドル (約 1億円) の差が出てしまうといった具合だ。また、電力コストは、一定期間レートを下げてもらう交渉もできたので、上手く交渉をすれば、すぐに A の年俸くらいの節約ができた。つまり、用地の選定というのは、単に場所を探すのではなく、先のことを考えて各種の交渉を行い有利な条件を整えるという部分が結構大切なポイントなのだ。そうした意味では、電力会社以上に州や市との交渉が重要。インフラの整備や減税などの条件も交渉次第でどんどん変わった。

計画されていた工場は、比較的大きな都市 (空港) から 1時間程度の距離にある小さなコミュニティーに建てるというもので、ウィスコンシン州のミルウォーキー、イリノイ州のアーバナ・シャンペーン、インディアナ州のインディアナポリス、ケンタッキー州のルイビル、テネシー州のナッシュビル、オハイオ州のシンシナチーといった都市の周辺の小さな町がターゲットだった。一日に平均 2つか 3つの町を見て回るのだが、時には、ヘリコプターで、5-6の町にある 10箇所以上の候補地を一日で見たこともあった。> 続きは、こちら