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ヒートポンプと蓄熱|頼れるエコ技術が支える家

冬の電力消費、特に、夜間の電力消費を抑えることが ソーラー発電を活用して カーボンニュートラルで 光熱費ゼロの家にするためには 重要だと考えた。そして、その為に S-house では ヒートポンプと蓄熱の技術を 最大限 利用することにした。

ご存知の方も少なくないと思うが ヒートポンプは エアコン(冷暖房)やエコキュート(給湯)だけではなく、冷蔵・冷凍庫、洗濯機の乾燥機などにも使われる優れた省エネ技術である。空気中から熱を集めることで 少ないエネルギーで 大きな熱を生む。そんなエコ技術である。もう少し詳しく説明すると 気体は 圧縮すると温度が上がり、膨張させると温度が下がる性質を有しているが ヒートポンプの中では 熱を運ぶ役割をする冷媒が圧縮による温度上昇と膨張による温度低下を繰り返しながら循環して 必要な熱を家の中に送り込むことになる。

一方、S-house では その優れたヒートポンプ技術を蓄熱の技術と組み合わせて さらに効率を高め、加えて、太陽光で発電した電気の自己消費率を高めることに努めている。具体的には 昼間の外気温が高い時間帯を中心に ヒートポンプを稼働させて 電気を熱エネルギー(お湯)に変えて 暖房と給湯に利用する。床暖房の蓄熱では 主に 床下の土間コンクリートを利用するが それだけではなく 家の壁、柱、床材、天井、家具なども 家全体を断熱しているので ある意味 全てが蓄熱材の役割を果たすことになる。

ところで、床下エアコン暖房なども ヒートポンプの技術を利用した暖房設備だが S-house の方法とは 何が違い どれだけの差が出るのか。そんなことを考えた時、最も違うところは ヒートポンプの稼働時間が短と稼働時間帯がある。ヒートポンプは 昼間の暖かい時に稼働させると その効率が高くなるが、加えて、そうすることで 太陽光発電の自家消費率が高まることになる。それには 蓄熱することが不可欠になるが それで 一定の節約ができる。正確な計測はしていないが それで 冬の電気使用量を2割程度 減らせると考えており、加えて、自家消費率を 30% アップできるとすれば(売電収入は 若干 減少するが)光熱費を 半分程度に抑えることが可能になる。床下エアコン暖房が 他の暖房機器に比べて経済的なシステムであることを考えれば S-house の暖房の省エネ性能の高さは ご理解頂けるものと思う。

“エコキュート”
出典:三菱電機 ウェブサイト
勿論、エコキュートは 極力 太陽光発電の電気を利用して お湯を炊き上げるモードの設定で運転する。湯を沸かすのは 夜間電力でも それを使うタイミングでもなく グラフのように 太陽光の電気がある時に 沸かして タンクに溜め置きする。ここでも 昼間の外気温が高い時に ヒートポンプを稼働させるので 効率が高くなり 省エネになる。
温水パイプ式の床下暖房には 様々なタイプのものがあるが S-house では 厚さ 200mm 程度の基礎のスラブコンクリートの上に 防湿シート、断熱材|スタイロフォーム 50mm を敷き(外壁側の断熱材は 防蟻仕様)その上に溶接金網を置き そこに温水パイプを敷設してから 100mm の厚さで 土間コンクリートを打つ方法を採用することにした。熱源が何時間かオフの状態でも暖房できる蓄熱量が確保できる構造であることがポイント。なお、家の中央のダイニングの壁に 1台設置したエアコンで 必要なら 暖房能力を補足することもできる。床は 基本的に 温度変化を受け難く 施工後のトラブルが少ない 床暖房用のフローリング材を使用した。
“基礎構造”
参考図:床下の構造
“ゾーン”
図:床下の温水パイプ配管図
温水パイプは 添付の図の通り 3つのゾーンに分けて敷設したが 各ゾーンの配管全長は ほぼ 52m とし それぞれのゾーンに均等に熱が伝えられるように配慮した。図は 全てが直線的に描かれているが 当然ながら 配管の曲がっている箇所は 曲線である。また、溶接金網にパイプをかしめる方法で配管したので 図面通りにならなかった箇所も少なからずあり 配管密度にはムラがあって 密度の高い所と低い所の床の温度差は(外気温にもよるが)最大 2℃ 位になることがある。床の温度の均一性は パーフェクトとは 言えないが 問題だとは考えていない。なお、その工事の様子を記録したのが 下の動画である。

床暖房の構造と仕組みは 以上の通りだが この床の表面の温度を(蓄熱層となるコンクリートの温度は 床表面の温度より数度高いはずだが)冬の間は 25 〜 30°C に保つように ヒートポンプを稼働させ 室温を 20 〜 24°C に保つようにしている。それが 太陽光発電の電気で ヒートポンプを 1日に 6 〜 8時間 稼働させるだけで達成できれば良いが 寒い時は 12 〜 15時間は 稼働させる必要がある。例えば、夕方 6時に 床の温度が 27℃ で 室温が 22℃ 程あったとしても 深夜から早朝にかけて 外気温が -5℃前後まで下がれば 夜にヒートポンプが止まると朝の 6時には 床表面の温度が 24℃、室温も 18℃ を切るような状況になる。因みに、床暖房用ヒートポンプ|エコヌクールピコ(30畳タイプ)は 定格消費電力 980W / 最大消費電力 1900W である。

タイマーそうした状況下、床暖房は タイマー運転するが 三菱エコヌクールのコントローラーは 二つのパターンのタイマー運転をセットできる。寒さの厳しい真冬の場合は 当初 水温設定 45℃(少し控えめ)室温 25℃ で 12時間 / 15時間運転の2パターンをセットし使い分け、寒さが緩んだら 設定を変更し 8時間 / 12時間の2パターン、さらに、6時間 / 9時間、4時間 / 6時間のように 春になるにつれて設定を調整していくことにしていた。しかし、エコヌクールは 運転モードに「通常運転」「ひかえめ運転」の2つのモードがあるので 後に それを利用することを考えた。その有効性は 今後 検証する必要があるが、水温設定を 47℃と 少し高目にして 昼間の太陽光発電が行われる時間帯は「通常運転」とする一方で 買電で稼働する時間帯は「ひかえめ運転」にして システムを稼働するアイデアを試すことにした。一方で 室温の最高を 1℃ 上げ 26℃ に設定したので 室温がそれを上回るとヒートポンプは 停止する仕組みである。それだと 寒い日の通常運転時の電力消費は MAX の 1.9kWh 近くでの運転が中心になり、控えめ運転時に 低く(定格の 0.9kWh 以下に)なる。午前中の床暖房の運転だけで 10kWh 前後を消費することになる。ヒートポンプの能力を昼間に最大限利用する運転が可能になれば 太陽光発電の自家消費率を上げることが出来ると考えた訳だ。

とは言え、S-house は 寒い時に 太陽光発電の電気だけで 暖房をするには 十分な蓄熱ができないこと、そして、ヒートポンプのパワーは 短時間で十分な熱を蓄熱するには もう少し大きい方が有利なことが判明した。従って、蓄熱量を大きくし ヒートポンプのサイズを大きくすることで その点が改善できるはずである。しかし、仮に、蓄熱量と ヒートポンプのパワーが 1.5倍や 2倍になったとして どれだけ節約できるのかを考えると 必ずしも そうした変更を加えることが 好ましいとは 言えない面もある。ただ、ヒートポンプは その定格消費電力が 1.5倍の エコヌクール 40 を(価格差が それほど大きくないので)選択すべきであったとは 感じている。暖房能力という意味では 必要であれば 24時間 ヒートポンプのお湯を床下に送ることもできるので 余程のことがない限り エコヌクール 30 の S-house が暖房能力不足になることはないが 買電量を抑えて光熱費を節約するという意味では 改善の余地があるし 機器の寿命にも差が出てきそうだ。

いずれにしても 黒磯の気象条件は 12月 〜 3月に 北西からの季節風「那須おろし」が吹き 寒さが厳しいが、晴れの日が多く、日照時間が比較的長いことも特徴で 太陽光発電とヒートポンプによる蓄熱式・暖房システムの効果が出難い条件ではない。

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