ゴルフ用具に係わるルール
♦ ルール 不適合なゴルフ用具
用具規則(別冊)には クラブのグリップ、シャフト、ヘッドの形状、構造、性能とボールの重量、大きさ、初速と総合飛距離などに関する基準が細かく定められており、その基準に適合しない 即ち 不適合な (non-conforming) ゴルフ用具の使用は 禁止されている。新ルールでは それ以前の付属規則 Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの規定を「クラブと球についての規則ガイド」に合併した形になったが 用具規則自体は 変更されていない。一方、ゴルフ規則 4「プレーヤーの用具」の 4.1b では 15本以上のクラブを持ってラウンドすることや不適合なクラブの使用を禁止しているが、不適合なクラブの携帯に係わる規則は 2019年のルール改定で一部変更された。それは 使用しなくとも 不適合なクラブをバッグに入れてプレーをすれば ルール違反であったものが 携帯しても使用しなければ 違反ではないと変更されたことだ。なお、適合性に関しては 通常の使用によって起きる摩損 (wear) によって 新品の時には適合であったクラブが 不適合な状態になったとしても そうしたものは 適合なクラブとみなされる。ただし、なんらかの人為的な加工がなされていれば この限りではない。
ところで、大部分の人は ご存知の事と思うが、SLE (Spring Like Effect) に係わる (R&A/JGA) ルール改正で 2008年 1月 1日から 全ての公式競技で 反発係数 (COR) が一定の値 (0.830) を超える、所謂、高反発モデルは 不適合となり、その使用が禁止されるようになっている。特に、普段 競技に出ない人が 競技に出場するような時は うっかり 高反発のクラブを使うことのないよう 注意が必要だ。
また、チッパーやジガー(» 詳細)は アイアンの一種と考えられているから その使用は認められているものの それが アイアンに適用される用具に係わる規則の要件を満たしていなければ 不適合なクラブの携帯 もしくは 使用に係わる罰則が適用されるから その点も要注意だ。つまり、パター用のグリップとしてのみ許される形状のグリップが装着されているもの、打面が二つあるもの、また、照準用の付属物が付いているものなどは 不適合なクラブだから使用出来ないと言うことである。
なお、ボールの重量は 1.620 オンス(45.93グラム)以下、また、大きさは 直径が 1.680 インチ(42.67ミリメートル)以上でなければならず、ボールを打った時の初速や総合飛距離といった性能の上限についても 内規で細かく定められている。なお、ティペッグについても その長さが 4インチを越えるものなど(» 詳細)はルール違反になる。いずれにしても、以上の詳細については JGA サイトの「用具規則」のページを参照下さい。
♦ 損傷で不適合になったクラブ
次に、あまり良く知られていないクラブの損傷に係わるルールであるが、通常のプレーによってクラブがラウンド中に損傷を受けた場合に どのような対応をすべきかについても 知っておく必要があるだろう。通常のプレーによる損傷があった場合、そのプレーヤーには (a) そのクラブをそのまま使い続ける (b) プレーが遅れないことを条件に そのクラブを修理できる という選択肢がある。ただし、通常のプレーによる損傷とは プラクティススイング、クラブのバッグからの出し入れ、また、クラブをうっかり落とすことなどによる損傷などに限定され、クラブを投げつけるなどの行為によってクラブが損傷した場合は 通常のプレー以外の行為によるダメージと言うことで 前述の (a) と (b) の選択肢は 与えられない。つまり、そのクラブは 使えないということである。
一方、ラウンド以前からクラブが損傷していた場合は そのクラブがルールに適合していれば 前述の (a) と (b) のオプションが与えられるが、理由の如何に係わらず、シャフトが曲がった状態など、損傷の状況によっては クラブがルールに不適合な状態になっていることもあり そのようなクラブを使用すれば 罰則が適用される。余談になるが、2014年・米 LPGA ツアー・メジャー最終戦のエビアン選手権、ニ日目に優勝候補の一人だった リュー・ソヨン選手が 4番ホールでパットを外した後に 怒ってパターを自分の靴に叩きつけ、シャフトを少し曲げてしまった。そして、その損傷で不適合になったクラブでプレーを続行したため 失格になったという事例もある。
♦ 15本以上のクラブの携帯
最後になるが、最も良くあるルール違反の 規定本数(14本)を超える数のクラブがバッグに入っていた場合のことについて説明しよう。そのような場合は それを発見した時点で 直ちに競技委員、同伴競技者、マーカーなどにその事実を報告する義務がある。そして、その時のペナルティは ストロークプレーであれば 1ホール目で発見した場合は 2打罰、2ホール目か それ以降で発見した場合は 4打罰となり、罰則は 1ラウンドにつき 最高 4打までと定められている。一方、マッチプレーの場合は 違反が発見されたホールを終えた時点でのマッチの状態を 違反があった各ホールについて 1ホールずつ差し引いて調整し、差し引くのは 1ラウンドにつき最高 2ホールまでだ。
加えて、規則に違反して持ち運んだクラブについては その違反を発見し次第 マッチプレーでは 相手に ストロークプレーでは マーカーか同伴競技者に それ以降 どのクラブを使用しないのかを宣言する必要がある。つまり、15本以上のクラブがバッグに入っていた場合は どのクラブを残りのホールで 使用しないのかを宣言する必要があると言うことだ。使用をしないと宣言したクラブを その後 そのラウンドで使用すれば ルール違反で失格になる。
ところで、プレー開始前に 15本以上のクラブがバッグに入っているのに気が付いたので 使わないクラブを宣言してスタートしたという行為は 旧ルールでは ペナルティーの対象であったが 2019年のルール改定以降 プレーヤーは 宣言をして 超過クラブをプレーから除外することで 無罰になると変更された。しかし、プレーヤーが故意に 14本を超えるクラブを最初のティーイングエリアに持ってきて その超過クラブを置いていかずに 使わないクラブの宣言だけして そのラウンドをスタートした場合は この選択肢は 認められず 規則 4.1b (1) が適用となるとなっており (つまり、ペナルティーが科される可能性が高いので) その点については 注意する必要がある。