ボールのドロップの仕方|ゴルフルール解説
♦ ドロップが必要になるケース
救済を受け ボールをドロップする必要が生じるケースは その処理の仕方別に整理すると 以下の 4つのパターンに大別できる。
(1) | 異常なグラウンド状態、動かせない障害物の中や上にあるボール、また、それらが プレーヤーのスタンスや意図するスイングの区域の妨げになる場合は 無罰の救済を受けられるが その場合は 救済の二アレストポイントから 1 クラブレングス内 (しかも、ホールに近づかない場所 - この記述は 以下の説明では 省略するが 常に 付帯する条件) にボールをドロップできる。 |
(2) | ボールがペナルティーエリアに入り 救済を受ける時は その境界線をボールが最後に横切った地点 また アンプレヤブルを宣言し救済を受ける場合は ボールがある場所を基点に その点とホールとを結ぶ線の後方線上(いくら離れても距離に制限はない)の任意の点から 1 クラブレングス内にボールをドロップできる。 |
(3) | ボールがレッドペナルティーエリアに入り 救済を受ける時は その境界線を最後に横切った地点から 2 クラブレングス内で ペナルティーエリアの外側の場所に、また、 アンプレヤブルを宣言し救済を受ける場合は アンプレヤブル(» 詳細)を宣言するボールから 2 クラブレングス内にボールをドロップできる。なお、旧ルールでは 赤杭の対岸のホールから等距離にある境界線の縁から 2 クラブレングス内という選択肢もあったが 新ルールで その選択肢はなくなった。 |
(4) | 打ち直し 即ち ストロークと距離に基づく処置(» 詳細)をする時は ティーショットを除き 初めのボールを最後にプレーしたと思われる場所を救済の基点に 1 クラブレングスの救済エリア内にボールをドロップし そのエリア内からプレーできる。(ティーショットでは リティー可)旧ルールでは 初めのボールを最後にプレーした場所の出来るだけ近くからプレーすることになっていた。 |
つまり、処理の仕方には (1) 救済のニヤレストポイントから 1 クラブレングス内、(2) 救済の基点となるポイントとホールを結ぶ線の後方線上の任意の点から 1 クラブレングス内、(3) 救済の基点となるポイントから 2 クラブレングス内、(4) 最後にプレーした所から 1 クラブレングス内 (ティーショットは リティー) の 4つのパターンがある。なお、ローカルルールで禁じられていない場合は 救済を受ける権利を放棄して プレーを行うことも可能である。例えば、カート道の上のボールをプレーした方が救済を受けるより有利な場合に そうした選択も出来ると言うことである。
♦ ボールドロップのやり方
ルールに従って ボールを拾い上げて ボールをドロップする時のファースステップは ボールを拾い上げる前に ティーペッグやコインなどで 何処がルールに従ってボールをドロップすべき場所かを確認できるようにすることである。例えば、ニヤレストポイント (救済の基点) と そこからピンまで等距離の 1 クラブレングス横の所に目印を置いたり、後方線上のここはと思うポイントに目印を置くことである。新ルールでは どんなドロップも 救済エリア内にボールを落とし その中にボールが止まらなければならないから この目印を置く作業は 必須になってくる。その上で そのマークを目印にボールが正しくドロップされたかを確認できるようにして ボールを持ち ヒザの高さからドロップするという手順になる。旧ルールからは 1) ボールドロップのやり方 2) 再ドロップの条件 3) 後方線上とストロークと距離 (打ち直し) のボールドロップの仕方が変わったが それに伴って新ルールで登場したのが救済の基点 (reference point of relief) と救済エリア (relief area) という概念である。その点をしっかり理解し 具体的なボールドロップに係わる手順を確り覚える必要がある。ドロップしたボールは ドロップが許されるエリア 即ち 救済エリア内に止まらなければ 再ドロップが必要になる。二度 ドロップした結果 救済エリア内にボールが止まらない場合は 今までのルールと同じで 二度目のドロップで ボールが落ちた所にボールをプレースすることになる。後方線上 (reference line) のドロップとリティーできない打ち直し (stroke and distance) のボールドロップでも 救済の基点という概念が導入されたので 慣れるまでは 間違えやすいかも知れないが 以上のように改定されたことで どんな救済のドロップも同じになり (旧ルールでは 異なった) 球のドロップのルールが統一された訳だ。
実は 上のイラストに示した やり直しを要する球 (A) と (B) は ルール上 正確には意味が異なる。どちらも その球をプレーしてしまえば ペナルティーになるが (B)のように 球が救済エリア内なら 1打罰、また、(A) のように 球が救済エリア外なら 2打罰になる。ところで「無効」と説明したが それは 救済エリア内にヒザから落とす「有効」なドロップを 2度やっても 救済エリア内に球が止まらない時は 2度目のドロップで球が最初に落ちた所に球をプレースするという手順でのドロップの 1回に数えられないドロップだという意味である。なお、肩の高さからのドロップは 正しくないドロップで 無効なドロップとして(B) と同じ扱いになり ペナルティは科されないが ドロップをやり直す必要がある。
♦ ニヤレストポイントと完全な救済
ここで 救済の基点を決めるにあたって 間違え易い点について 少し説明しよう。例えば、右図のようなカート道にボールがある場合は 救済を受けられるが、そうした場合の二ヤレストポイントが道の右側なのか 左側なのか。注意して欲しい点は 物理的に近い方が 必ずしも ニヤレストポイントのサイドにはならないと言うこと。ご存知の方が多いと思うが、例えば、カート道のほぼ中央にボールがある場合、右利きか左利きかで ニヤレストポイントは異なる。右図のような状況で カート道の中央にボールがある場合、右利きの人の二ヤレストポイントは カート道の左側の A になり、左利きであれば 右側の Y になる。その理由は 動画でも説明されているように 救済を受ける場合は それを受ける理由になったものの影響が完全になくなる救済 即ち「完全な救済」を受けなければならないからだ。つまり、右利きの人の場合、右側のニヤレストポイントを決めるためのポイントは カート道に足がかからない所に立った場合のニヤレストという考え方で 道の右側のすぐのポイントではなく 次のショットをするクラブをベースに スタンスを取って構えた時にボールが来る位置 B になる。
ニヤレストポイントを決めるステップとしては A と B に ティーを挿して どちらがボールに近いかを確認することになる。必要であれば、クラブを ものさし代わりに使って距離の比較すれば良い。従って、カート道の中央にボールがある場合、右利きの人のニヤレストポイントは カート道の左側の A になり、左利きであれば 右側の Y になるのである。概ね、右利きの場合、黒の線より左にあれば ボールが道の中央よりも僅かに右側にあっても ニヤレストポイントは 左側で、逆に、左利きであれば 白い線より右にあれば 右側の Y がニニヤレストポイントになる。この考え方は 修理地などでも一緒で 修理地に足がかからないようにスタンスを取った時のボールの位置で 左右のどちら側がニヤレストポイントになるかを決めるべきだ。いずれにしても、救済を受ける場合は それを受ける理由になったものの影響が完全になくなる救済 即ち「完全な救済」を受けなければならないと言うことだ。
♦ 複数の理由で救済が受けられる時
比較的 稀なことではあるが 複数の救済を受けられるケースがある。例えば、カート道が カジュアルウォーターの中にあり そのカート道の上に ボールがある場合などである。そうした場合は カート道を救済の理由にしても良いし カジュアルウォーターを救済の理由にしても良いが 最初に どちらを選択するかによって 最終的な救済のニヤレストポイントが異なる場合もある。
そんな場合は どちらが有利かを判断して 自分にとって都合の良い救済を選択することが出来る。つまり、カート道という理由で救済を受ける場合は その救済によって カジュアル ウォーター という 別の救済を受けられるエリアの中が最初の救済の二アレスト ポイントであれば そこを基点に ボールを ドロップ。そして、その結果、カジュアル ウォーターの救済を受ければ 最初に カジュアル ウォーターを理由に救済を受ける場合と大きく異なる場所からボールを ドロップし プレーすることが可能になる訳だ。このように プレーヤーは 自分に有利になる救済処置を選択する権利があるのだから ルールを 最大限 自分の味方につけるようにすべきである。