パッティング思考法
♦ ピンは イン or アウト
ご存知のように 2019年からの新ルールになって グリーン上からでも 旗竿を立てたままパットができるようになり、旗竿は 残すべきか、抜くべきかという議論がなされるようになった。プロの試合を見ていると 短い距離のパットは ピンを抜いてパットをしている人が少なくないので そうしたケースでは ピンは抜いた方が有利と思っている人も居ようが 超高速の難しいグリーンに 硬めのポールの旗竿という条件でプレーをすることの少ない アマチュアの場合は パットの距離に関係なく「残した方が有利」という考え方が大勢を占めるようになっている。
まず第一に 知って欲しいことは 右図に示したような カップ/旗竿/ボールのサイズに係わる事実である。カップは 直径 4.25 インチ (108mm) で 旗竿のポールの直径は 約 0.5 インチ (12.7mm:ルール上の規定はない) で 図のように ボールは 直径が 42.7mm 程度 (ルール上は 42.68mm 以上) だから 旗竿があっても(それが垂直に刺さっていれば 約 5mm のクリアランスがあり)カップの中に余裕を持って入るようになっている。従って、旗竿の材質が極端に硬い場合は 別にしても ボールがカップインする可能性は 多くの場合 それがあることによって高くなると考えられる。また、距離感は 旗竿を残した方が良くなる傾向にあることも大切なポイントだし、入らなかった時に残る次のパットの距離に差が出る点も無視できない。さらに、旗竿を残すことは 時短にも資するので 慌ててプレーをする必要性が低くなるのも大きなメリットである。旗竿があるとパットが非常にし難いと感じる人は 別にしても 旗竿が大きく傾いていたり 風で激しく揺れたりしていない限り、日本のコースは 柔らかなポールの旗竿が一般的だから 極力 残すべきだろう。最初は 違和感があっても すぐに慣れるものだ。
♦ ファーストパットの重要性
トータルのパット数を如何に少なくするか。その鍵を握るのが ファーストパット、即ち、最初に打つパットの良し悪しだ。右のグラフは パットの距離とそれが入る確率の関係を示したものである。個人の能力によって このカーブは 多少異なるが 殆どの人は このような形のカーブになる。つまり、1m 以内の短いパットは 80% 以上の確率で入るが それが 2m 位で 50% になり さらに 3.5m か 4m を越えると 20% 以下になる。
ファーストパットで カップを 2m 以上オーバーしたり ショートすれば 次のパットが入る確率は 半分以下になるが、最初のパットで カップの傍 50cm 以内にボールを止められれば そのパットを外すことは 殆どなくなるのだ。そして、もう一つ 知っておいて欲しい事実に 多くの人が 7m ~ 8m のパットを 左右に 2m も外すことはないが 2m 以上 オーバーしたり ショートすることは 結構 あるということである。そんなことは 今更言われなくとも分かっているという人も居ようが、パットの距離のコントロールを大雑把な勘だけに頼っている人は 少なくないし、ファーストパットの重要性について十分理解していない人は 程度の差は あろうが 非常に多い。最初のパットでは(ワンピン以内の短いパットは 方向性の重要度も高くなるが)距離を合わせることに 集中すべきなのだ。
1st パットで 残った距離 | 3.5m | 2.0m | 1.0m | 0.5m | 0.0m |
2 パットで 決まる確率 | 20% | 50% | 80% | 95% | 0% |
3 パット以上になる確率 | 80% | 50% | 20% | 5% | 0% |
♦ 距離(スピード)の合わせ方
以上のように、ツアープロでもない限り 最初のパットでは 大抵の場合 それを入れるより 正しい距離を打って カップの近くに ボールを止めるようにすることが極めて大切なのだから、まず、ラウンドの前には 5m、10m、15m くらいのパットを平らなラインで練習し グリーンのスピードとパットのフィーリングを確認しておくべきだ。そして、その距離感を頭にインプットすること。早めなグリーンでは 下りのパットが どんなスピードになるかも 良くチェックしておくと良いだろう。
パットを打つ時には アドレスに入る前に ボールの近くに立ってカップを見ながら素振りをして 距離感(ストロークの大きさとスピード)を合わせるのが一般的である。目をつぶって 感覚を確認する方法などもある。また、長いパットの場合は カップまでの距離に合わせた素振りをするだけでなく、短いパットのストロークから 徐々に ストロークを大きくしながら 必要な距離のストロークの感覚を見つける方法も有効だ。例えば、40 フィート (12m) のパットであれば、20、30、40 フィートと少しづつ距離を長く設定して それぞれの距離に合わせた素振りをして 相対的に 40 フィートの素振りの感覚(ストロークの大きさとスピード)を確認するという方法である。 » 1-2-3 距離調整メソッド
また、パッティングのスタイルにもよるが 左腕を中心に距離のコントロールをするといった要領で 片方の手だけに その役割を委ねる方法もある。なお、10m の下りのラインでは 平らなラインに換算して 6m の感覚で打とうとか 上りの 5m のラインでは 7m の感覚で打とう といった具合に 平らなグリーンを想定して ターゲットを決めて打つ方法も有効である。詳細は 後述するターゲットの決め方で。
♦ グリーンの読み方
ファーストパットの精度を上げ 3 パットや 4 パットをなくすには 距離のコントロールの良し悪しだけでなく グリーンを正しく読むことも必要になる。グリーンは 例外もあるが 多くの場合 奥から手前に傾斜しているものである。つまり、受けているのが普通で 加えて 左右のどちらかが高い または 低いことが多い。そうした中、ボールが転がるラインは 自分のボールとホールの位置関係をボール側からとホール側の両方から、また、必要と感じれば 横からも見て ボールがどう転がるかを判断するのが基本である。どちらから見ても ラインが 同じように見えるし 迷わず ラインを読みきれると感じる場合は 深く考える必要はないが 必ずしも そうなるとは限らない。つまり、上っているのか 下っているのか、また、フックするのか しないのかなど 迷うことが少なからず起きるはずだ。そんな時に すべきことが 以下のことである。
ご存知のように、パットしたボールは そのボールを打ち出した方向と初速 それに グリーンの傾斜とスピード(摩擦)によって その軌道が決まる。それは ボールに重力が働いているからだが、ボールが重力によって真っ直ぐ転がるラインをフォールライン (fall-line) と言い、摩擦がなければ ボールが止まらずに転がってホールの上を通過する線が一本存在することになる。グリーンが曲面であれば フォールラインは 曲がるが 通常 自分のパットを考える上で必要なフォールラインは 直線になることが多い。
そのフォールラインに対して 自分のボールが何処にあるかで パッティング ラインが決まるから 常に フォールラインを意識して グリーンを読むことで 読みの精度を上げることが出来る。平面のグリーンを想定した上の図を使って説明するが、円がグリーンで 中央にホールがあるとして、右上から左下への直線がフォールラインとした時、A のエリアにあるボールは 下りのスライスラインになる。そして、B のエリアは 下りのフックライン、C のエリアは 上りのフックライン、そして、D のエリアは 上りのスライスラインになる訳だ。フォールライン 及び それに ホールで直角に交わるライン (L) を基準にしてグリーンを読む癖をつければ 迷いながら パットをしなければならないケースは 減るはずだ。ライン (L) に対して自分のボールが何処にあるかを見ることで 上りか 下りか そして その程度がどのくらいかという判断の精度は 上がるだろう。また、パットのライン 即ち スピードと曲がり方は グリーンのアンジュレーション つまり 傾斜だけでなく 芝目にも影響されるので 場合によっては そうした調整も必要になってくる。芝目は 1) 水、2) 日光、3) 風などの影響で出来るものだ。» 芝目のお話し
♦ ターゲットの決め方
グリーンを読むと言うことは これから打とうとするパットのスピードと曲がり具合を予測することであるが、それが出来たら 次にすべきことは ターゲットを決めることだ。その時に有効なのが 平らなグリーンに換算して ターゲットを決める方法である。つまり、下りのフックラインのパットであれば ターゲットをカップの右手前に置くと言う方法である。
そこで、まず始めに グリーンの読み方と ターゲットの決め方の基本を説明しよう。数学の授業で勉強した三角形の相似の概念のように 傾斜が均一なグリーンで打つ場合 ボールを打つ強さによって ラインは 右図のような関係になる。つまり ボールからカップの前後までのグリーンの傾斜が同じ場合は ボールの軌道 即ち パットのラインは 三角形の相似の関係になる。右図のような状況下で オレンジのカップに入れるつもりで カップがなければ ボールが A で止まるように狙って打った時(狙った方向にボールが打ち出せるという仮定で)強く打ち過ぎれば B にボールが転がる軌道になり、また、弱ければ C に転がる軌道になる理屈だ。また、同じ傾斜のグリーンでも 高速グリーンでは ボールが真っ直ぐに転がるラインに乗ってからも なかなか止まらない という現象が起きるから 図で言えば(中程度のスピードのグリーンなら)B でボールが止まるような傾斜のグリーンでも E までボールが行ってしまう現象が起きるから 曲がりは 大きくなる理屈である。
一方、上りのラインで青色のカップ U を狙うような場合は UT をターゲットに、また、下りのラインで カップ D を狙う時は DT をターゲットにするといった具合である。以上のことを念頭において ラインを読んで ターゲットをどこに設定すればボールがラインに乗って転がるか という練習を何度もすると良いだろう。例えば、青色のカップ U に入れるつもりで(下りで速いラインにも拘らず)グリーンのスピードを あまり速くないと判断してしまえば ボールは E まで行ってしまうようなことになる。つまり、グリーンのスピードを見誤れば 次は 長い距離の外す可能性の高いパットが残ることになる。正しくグリーンのスピードを読むことは 極めて重要で 実際のラウンド中は そのことに神経の多くを注ぐべきである。
以上、パッティングの極意は 正しくグリーンを読んで その距離感のとおりにボールを打つことに集中する。その集中にあるということを忘れないで欲しい。十分 集中せずに ボールを雑に打ってはいないだろうか。ファーストパットの重要性を認識して 普段から狙った距離を正確に打つ練習を沢山して下さい。そうすれば 本番でパットをする時の意識も自然と変わるだろう。