新・ゴルフルール|主な変更点と違反の可能性
2019年から ゴルフルールは 新しくなる。長い間、規則 1 ~ 34 で構成されていた プレーについての規則は 新たに 規則 1 ~ 24 という構成になる 大改定だ。従って、大きな変更が幾つもあるので それら新旧の違いを知らずに 旧ルールの知識だけで プレーをすると ルール違反を犯す可能性が高い。そこで、ここでは そんな 新旧ルールの主な変更点のポイントと ルール違反の可能性について 分かり易く説明したい。主な変更点は 以下のリスト「主な ルール 変更点|2018 ~ 2019」に列挙した a) ~ j) に係わるもので a) 救済を受ける条件と方法、b) 球を誤って動かしてしまった時の処置と罰則、c) 球を打った結果 生じる罰則や救済、d) グリーン上での禁止行為、e) ウォーター ハザード (ペナルティ エリア) のプレー、f) バンカーからのプレー、g) 球の交換、h) スピード プレー、i) マナー・エチケット、j) その他 の 10 項目に カテゴライズし 順を追って説明する。
♦ 新ルールの主な変更点と違反の可能性
a-1) 救済を受けて 球を ドロップする時の規則が大きく変更された。まず初めに 救済の時に 球を ドロップすることが許されるエリアの決め方である。救済の二アレストポイントや 球が ウォーター ハザード (新ルールでは ペナルティ エリアという用語が使用される) の境界線を横切ったポイントを基点に 1 or 2 クラブレングス内に 球をドロップするという考え方は 同じであるが 球をドロップできるエリアを決めるための計測に (長尺) パターを使用できなくなった。なお、ドロップされた球は 詳細を後述する 救済エリア (relief area) 内に止まらなければならなくなり、ドロップした球が落ちた所から 2 クラブレングス内に止まらなければ 再ドロップというルールは 撤廃された。
a-2) 救済のボールドロップは 肩の高さと規定されていたが 右の様に ヒザの高さ と変更された。前述の救済エリアに止まらなかったり、肩の高さなど 正しくない高さからボールを ドロップした場合は 無罰だが ドロップのやり直しが必要になる。また、救済を受ける時には 常に 救済の基点 (reference point of relief) から 該当する救済ルールに従って 1 クラブ または 2 クラブ レングス 内のホールに近付かない 半円形上の救済エリアに 球を ドロップし、そのエリア外に出た球は ドロップのやり直しが必要だが、再ドロップは 2 回までで その後の処置の考え方は 旧ルールと同じで 2 回目のドロップで球が落ちた所に 球をプレースすることになる。また、ピンとペナルティーエリアに入ったポイントの後方線上のボールドロップでも 前述の救済の基点という概念が導入され 上の写真のように 救済の基点を決めて球をドロップし 救済エリア内にボールが止まらなければ 再ドロップになる。加えて、リティーできない打ち直し (stroke and distance) のボールドロップでも 前述の救済の基点という概念が導入され 他の救済の方法と同じに 救済の基点を決めて 球をドロップし 救済エリア内にボールが止まらなければ 再ドロップになる。これらのボールドロップは 救済の基点をティペッグなどでマークし ドロップした球が救済エリア内に止まったか否かを間違いなく判断できるようにして ボールドロップを行うことが推奨される。注意すべき点は そうした方法で行わずに 目視で その処理を行ったからと言って ペナルティーは 科されないものの 目印なしに ドロップを行なった場合は ドロップしたボールが最初に地面に落ちた所が救済の基点になり その救済の基点をベースに 救済エリア内に球が止まらなかったと判断される場合は 再ドロップになる。(規則 17.1d (2)/1) つまり、正確に言えば 少しでも ボールがホールに近付く方向に転がれば ドロップのやり直しが要求される訳だから 目視でのドロップは ルール違反を犯し易い状況を生じさせる行為である。ティペッグなどの目印を置くことが 以上のことからも 推奨される。なお、肩の高さからのドロップを含め 規則通りに 救済のボールドロップをせずに そのままプレーを続ければ 1 打罰、救済エリア外のボールをプレーをした場合は 2 打罰が科される。b-1) 旧ルールでは パッティング グリーン上の球を誤って動かすと 1 打罰で 球を元の位置に戻して プレーしなければならなかったが、新ルールでは 無罰で 球を元の位置に戻して プレーすれば良くなった。また、旧ルールでは 自然に 球が動いた時は 如何なる場合も 新たに 球が止まった所からプレーすること と定められていたが、新ルールでは 球をマークし リプレースした後に 動いた場合は 自然に動いた球でも 元の位置に戻すことになる。当然、元に戻せば 無罰であるが、戻さなければ 2 打罰。
b-2) 新ルールでは 捜索中に 誤って動かしてしまった球は 無罰で 元あったと思われる所に戻して プレーをすれば良い と変更された。旧ルールでは 1 打罰。
b-3) プレーヤーが球を動かす原因になったか否かは その証拠の重さにより判断され、おそらく そうだと思われる場合 (know or virtually certain) ゴルフでは 有罪と旧ルールには 記述されていたが 新ルールでは より明確に 少なくとも 95% 以上 確かな場合と明記されるようになった。その変更の意義は 微妙だと思うが 判断基準として 少しでも明確になった訳だから 改善と言えよう。
c-1) 二度打ちは ball (accidentally) struck more than once と 英語版 ルールブックに記述されている通り、一回のストロークで 二度以上 誤って 球をヒットした場合のことで 旧ルールでは 1 打罰だったが、新ルールでは 無罰に。故意の二度打ちは 考え難いが ルール上は 2 打罰になる。
c-2) 打った球が自分 または 自分のキャディや携帯品に当たった時は 1 打罰が旧ルールでは科されたが、新ルールでは 無罰に。マッチプレーの対戦相手や そのキャディに当たった場合も 無罰であるが、対戦相手は そのプレーをキャンセルする権利を有する。
c-3) ピッチマークに食い込んだ球に係わる 旧ルールの救済は フェアウェイ もしくは フェアウェイ並みに芝を短く刈ってある所 (closely mown area) に限って 自分の球が作ったピッチマークの中に その球があることが確認できれば 球を綺麗にしてから ホールに近づかないようにして その箇所に出来るだけ近い所に 球をドロップする という救済が受けられた。つまり、ローカルルールで定めない限り、その他のエリアでは 救済が受けられなかったが、新ルールでは スルーザグリーン (新ルールでは ジェネラル エリアに用語が変更された) つまり バンカーと ペナルティ エリアを除く 全てのエリアで この救済を受けられるようになった。
d-1) 旧ルールにおける グリーン上での禁止行為には i) ルールが許していない理由で 自分のプレーの線に 触れること、ii) ルールで許されないタイプのダメージの修復 があったが、そのどちらも 新ルールでは 禁止されていないので、ある意味、ほとんど何でもありになった訳だ。つまり、自分のパッティングラインをパターで触れて キャディーと コミュニケーションすることや スパイク マークを含む 如何なる グリーン上のダメージも修復することが 新ルールでは 自由に出来るようになった。なお、グリーン上の球を誤って動かした時の罰則も b-1) で説明したように 撤廃された。
d-3) 旧ルールの下では 出来なかった グリーン上の球を プレーヤーの許可なしに キャディが 勝手に マークして拾い上げることが 新ルールでは 出来るようになった。
e-1) 旧ルールに定められた ウォーター ハザード は 新ルールでは ペナルティ エリア (penalty area) と呼称が変わるが、赤杭で 表示される ラテラル ウォーター ハザードは レッド ペナルティ エリア、黄色杭のハザードは イエロー ペナルティ エリアと呼ばれるようになった。黄色杭、赤杭の いずれのペナルティ エリアに入った球も その救済では ピンと ペナルティ エリアに球が入ったポイントの後方線上に 新たな球を ドロップする救済の選択肢が与えられるが、前述 a-2) の説明の様に 救済の基点を決め それを起点にした救済エリア内に 球をドロップしなければならないし、球が そのエリア内に止まらなければ 再ドロップになるが、そのプロセスを正しく守って プレーをしなければ 2 打罰の可能性がある。
e-2) ペナルティ エリア内の禁止行為として、旧ルールでは ソールをすること、ルースインペディメントに触れることがあったが、そうした禁止行為が 新ルールでは 一切なくなった。従って、ソールをしたり、ルースインペディメントを 取り除くことが 新ルールでは 出来るようになった。
e-3) 赤杭のウォーター ハザードでは ピンまで等距離の対岸の基点から 2 クラブレングス内のボールドロップが許されたが、レッド ペナルティ エリアでは 対岸のドロップの選択肢はなく、間違って そうしたドロップで プレーをした場合は 2 打罰か 競技失格の何れかになる。
f-2) バンカー内のアンプレヤブルの選択肢として 新ルールでは 2 打罰の下に ピンと球を結ぶラインの延長線上のピンに近付かない バンカー外に救済の基点を選び 球をドロップする救済を受けることが出来るようになった。旧ルールでは バンカーが 完全に 水浸しの場合を除き その選択肢はなかった。
g-1) 切れたり、ひびが入ったり、変形しているのが見て分かるインプレーの球は 旧ルールでは プレーに適さない球となり ホールアウト前であっても 別の球に交換することが許された。新ルールでは 変形しているのが見て分かる状態の球は プレーに適さない球とはならず 交換できないと記述されている。これには 現在市販されているボールは カバーに ひびが入るか 切れたりしない限り 変形しないという意味と ボールの表面のこすり傷は 交換の理由にならないという意味が込められている。なお、旧ルールでは ボールを拾い上げて その状態をチェックする時に プレーヤーは それを宣言をして そのプロセスを 他のプレーヤーに観察させる機会を与えることになっていたが、新ルールでは その宣言も プロセスを観察させる機会を与えることも 必要ない。
g-2) インプレーの球の交換は 旧ルールでは 上述の理由か 罰則の下の救済を受ける時以外には 許されなかったが、新ルールでは 無罰の救済を受ける時を含め 球をを拾い上げて ドロップする時は 何時でも 別の球に交換できると変更された。
h-1) スピード プレー推進のために ラウンド中は 常に 迅速に (promptly) プレーをすることが 新ルールでは 強調されており、具体的な ラウンド中の行動規範が示されている。例えば ストローク プレー競技では 遠球先打を必ずしも守らずに 適宜 自分の球が ピンから最も遠くになくとも マナーに反しない場合は 先に プレーをする 所謂 レディ ゴルフ (ready golf) を心掛けることや ボールの所へ移動後は 40秒が 迅速なプレーと言う訳ではないが 特別な理由がない限り それ以内に ボールを打つことを推奨 (encourage) している。
h-3) ホールごとの最大ストロークを設定する競技形式が 新ルールでは 公式なものとして加えられた。最大ストロークの設定の仕方として 例に挙げられているのは i) パーの 2 倍、ii) トリプルボギー、iii) ハンディに応じた ネット ダブルボギー であるが、その設定は 競技委員会に委ねられている。
h-4) 専属キャディが付いて プレーする人以外には 然程 影響のないルール変更であるが、ショットや パット直前のキャディによる アドレス時のアラインメントの援助、即ち、プレーヤーの為に 真後ろから方向をチェックする行為が 新ルールでは 禁止になった。
i-1) 旧ルールでは エチケットの重大な違反となる場合、委員会は そのプレーヤーを競技失格とするという「失格」以外の罰則が適用されることは なかったが、新ルールでは 委員会が「ゴルフの精神」の考え方に基づき 独自のエチケットに係わるルールを作成し、違反の程度に応じて 失格だけでなく 1 or 2 打罰のような罰則を適用することが出来るようになった。
j-1) 旧ルールでは 通常のプレーの結果 損傷した ゴルフクラブに限り それを残りのラウンドに使い続けることが出来た。自分の失敗に激怒して クラブを叩きつけて損傷したケースなどは そのクラブを使うことが禁止された。一方、通常のプレーの結果 クラブがプレーに適さない状態になった場合は 別のクラブに取り換えることが出来た。しかし、新ルールでは プレー中に 損傷を受けたクラブは 理由の如何を問わず 修理したり、使い続けることが出来るようになったが、損傷したクラブの取り換えは 外力によって クラブがプレーに適さない状態になった時のみ許されると変更された。
j-2) 旧ルールでは 距離計測器 (DMD) の使用は ローカルルールで許す時のみ使用できるとなっていたが、新ルールでは 逆に ローカルルールで禁止しない限り DMD の使用は 許されることになった。ただし、ターゲットとの高低差を計測する機能を有する DMD の使用は 禁止となっている。このルールに違反した場合、最初の違反は 2 打罰、その後 また違反すると 競技失格になる。