プレーの順番|ルール解説
♦ ティーショットを打つ順番
ルールブックには ティーイングエリアから最初にプレーすべきプレーヤーが 「オナー」 だと説明されている。そして、最初のホールのオナーは どんな方法、例えば、くじ引きやジャンケンなどで決めても良いとも記述されているが、それ以降はスコアの良い順にティーショットをすることと定めている。ただし、同スコアの場合は 前のホールの順番でプレーを続けることになる。ゴルフ場によっては 1番ホールと 10番ホールに右のイラストのような くじ引きセットが設置されている所もあるくらいである。ティーイングエリアに全員が集まってサークル上に立ち、その中央にティーペッグを投げて ティーペッグの先が指した人から時計回りの順にティーショットを打つ方法も良く用いられる。ただし、公式競技では 競技委員が 予め最初のホールのプレーの順番を決めておくのが一般的である。
オナー (honor/honour) には名誉とか栄誉といった意味もあり、そうした意味の言葉がゴルフ用語として使われるようになった訳である。スコアの良い人に敬意を払って先に打って頂くという発想のものだから、その順番を無視してしまうような行為は(無罰とは言え)極めて失礼なことだ。なお、オナーのことをオーナー / オウナー (owner?) などと言っている人を時々見かけるが その点も間違いのないよう。
♦ ティーショット以降の順番
ティーショット後は遠球先打、即ち、ホールからの距離が遠い アウェイ (away) の人から先にプレーをするのが大原則だ。しかし、冒頭にも述べたようにストロークプレーでは 間違った順番でプレーをしても罰則がなく グリーン周りやグリーン上で遠球先打の原則が守られないことは少なくない。グリーン上のプレーで旗竿を抜いてプレーする必要があった時は ピンからの距離が近いにも拘らずチップショットをする人が先にプレーすることが一般的にはよく行われたが、新ルールでは(パットの時にピンを抜く抜かないの状況によって微妙な状況になる時もあろうが)そうしたことをせずに遠くの球の人からプレーをすることが ルール的にもマナー的にも 正しい処置になったと言えるだろう。
一方、マッチプレーの場合は アウェイのプレーヤーがプレーの順番を無視してプレーをした対戦相手のストロークを有効にも無効にもする権利を持っているから、プレーの順番を守らない訳には 原則 行かない。マッチプレーのルールにあまり馴染みのない人のために少し補足すると、例えば、マッチプレーの対戦相手がアウェイでもないのに 50cm のパットを お先にと言って打った場合、入った時は打ち直しを要求出来るし、もし、外せば、そのストロークを有効にすることが出来る。もちろん、パットだけに限ったことではなく、どんな場合でも同様に 遠球先打のルールに従っていないショットに対しては、有効、無効のクレームが出来る規則になっている。 » マッチプレーのルール
♦ プレーの順番に係わる権利と義務
前述のように ゴルフでは遠球先打が原則だが、そもそも、後、先、どちらでプレーをするのが有利なのかという疑問がある。プレーイングコンディション(例えば、グリーンの状態や風の向き、強さなど)を察知するという観点からは後からプレーをする方が有利になるが、マッチプレーでは心理的に先にプレーをする方が有利になることもあるという考え方があり(ルールブックに その理由が明記されてはいないが)後からプレーすべき人が先にプレーをした場合は対戦相手に再プレーを要求する権利が生じるルールになっている。但し、新ルールでは プレーファーストが推奨されており、マッチプレーでも 対戦相手の合意を得て プレーファーストに資するプレーの順番の変更は むしろ推奨されるようになっている。つまり、マッチプレーでプレーの順番変更の合意を対戦相手同士がすることが許され、その合意があった場合は、アウェイの選手のリプレーを要求する権利は消失することになる。
とは言え、先にプレーすることが義務なのか、それとも、権利なのかという考え方についても 頭を整理しておく必要がある。お先にで 後からパットすべきプレーヤーが先にホールアウトするのはテレビのゴルフ中継でも良く見るシーンである。つまり、後からプレーする権利を持っている者が先にプレーをしている訳で、それは権利があってしていることなのか否かという疑問である。旧ルールの裁定集には、先にプレーすべき競技者 (B) が 異議の申し立てをした時点で 先にホールアウトしようとしている競技者 (A) が自分の球をすでに拾い上げていた場合は、規則 10-2b の規定に鑑み、順番をかえて先にパットすることはできないとしている。(通常、このような異議申し立てが起こることは極めて考え難いが。)ただし、前述の異議を申し立てた時点で A が自分の球をまだ拾い上げていなかった場合は B がパットする前に B が 規則 22 (プレーの援助や妨げになる球) に基づいて A の球を拾い上げるよう A に対して要求したか否かによって解釈は異なるとの記述もあり 複雑な説明になっている。» 詳細
つまり、先にプレーをする義務と後にプレーをする権利については明確に定められているが、先にプレーをする権利と後にプレーをする義務については 若干 分かり難いと言うことだ。ストロークプレーで 先にプレーするのが義務であることは良くあるが、後からプレーすべき人が先にプレーをする権利を有していることは稀で、ただ、先にプレーをすることが 通常 大目に見られているのだと覚えておけば無難だろう。なお、後からプレーをする権利を有する他の競技者の申し立てに対して それを受け入れる義務のある者が拒否をした場合は競技失格になる可能性もあるので その点も併せて覚えておこう。
♦ チーム戦でのプレーの順番
一対一のマッチプレーのプレーの順番については、前述の通りであるが、ライダーカップやプレジデンツカップでお馴染みのチーム対抗戦のフォーボール・ゲームのマッチ・プレーやベスト・ボールのゲーム形式では、また、少し異なったルールになっている。その詳細は 規則 30 に明記されているが 「同じサイドの球は そのサイドの任意の打順でプレーすることができる」 という内容である。(サイドとは マッチ・プレーに係わるゴルフ用語で、1人のプレーヤー、または、互いにパートナーである複数のプレーヤーのことを言う。)» ゴルフの競技方法
例えば、バーディー・パットとパー・パットの残ったサイドは より価値のあるバーディー・パットのボールのプレーヤーが(ほぼ同じラインにボールがある場合は 特に)パートナーの打つパットを見てから後で打つようにするという戦法を使うのが常套手段。その理由は、パーパットが先に決まれば、バーディー・パットを強めに打つことが出来るし、先に打ったプレーヤーのボールを見てグリーンのスピードやライン(傾斜や芝目)に係わる情報を得ることができるなどのメリットがあるからだ。
そんな状況において、対戦相手のグリーン上での前述のような戦法を阻止する戦法として、例えば、ボギー・パットを残した選手に対して そのパットをコンシード (OK) するということが良く行われる。もちろん、その場合、コンシードされたプレーヤーは パットをすることが許されず、もう一方のプレーヤーが 他方のプレーヤーのパットを参考にすることは出来なくなる。しかし、コンシードする戦法は 一長一短。例えば、バーディー・パットの対戦相手のプレーヤーにラインを見せない目的で そのパートナーのパー・パットを コンシードした場合などは バーディー・パットを強めに打つことが出来るようになるなどの状況になるからだ。
いずれにしても、フォーボールゲームは このようにグリーン上での様々な駆け引きがあり、そうした面でのゴルフの楽しさが加わることもあって、欧米のプライベートクラブのメンバー同士のゲームとして根強い人気があるものだ。個人競技のイメージで 自分のスコアへの挑戦が出来るだけでなく、チームの仲間(パートナー)と団体戦を 同時に楽しむことが 出来るので プラスアルファーの面白さがあり 絶対的な人気を誇っている。 » フォーボールゲームのお話
自分の本当のスコアが分かるまでプレーをしたい人は 各ホール、フォーボールのゲームが決着した後に、コンシードされたパットを打つようにし、フォーボールゲームを楽しみながら、本来のスコアを 記録することも可能だ。