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不当の遅延、スロープレー|ルール解説

Introduction
ストップ・ウォッチゴルフの規則 5.6 には スロープレーに対する規定がある。不当の遅延、速やかなプレーのペース (Undue Delay; Prompt Pace of Play) というタイトルで プレーのペースについての規則を定めている。そこには プレーのペースが遅いグループは 後続のペースの速いグループを先に行かせることが推奨されるといったことも記されている。

基本的に、それぞれのホールのプレーを終えた後に次のティーイングエリアに移動し そのプレーをスタートさせるまでの間も含め、プレーヤーは不当に遅れることなく、委員会がプレーのペースについてのガイドラインを決めている時は それに従ってプレーをしなければならない。これに違反した時の罰則は 1回目の違反が 1打罰、2回目の違反は 一般の罰 (2打罰 または そのホールの負け)、3回違反すると失格になる。

スロープレーに対する罰則

旧ルールでは この規則に違反した場合 ストロークプレーでの罰則は 2打罰、マッチプレーでは そのホールの負けで、その後 更に同じ違反があった場合は 競技失格だったが ストロークプレーに限り、委員会は競技規定で その違反に対する罰を初回の違反 1打罰、2回目の違反 2打罰、その後 更に同じ違反があった場合は競技失格と修正することが出来るとなっていた。とは言え、このルールの運用は プロ・アマの競技を問わず 極めて分かり難いものであったことは否めない。一般のアマチュア競技の代表格とも言える月例競技などでは 前の組から 1ホール以上遅れ 決められた時間 (例えば、ハーフ 2時間 15分とか 20分) 内にプレーを終了できない組があった場合は 委員会がその組の全員に (情状酌量の余地がなければ) 2打罰を課すというようなルールの運用がなされるのが一般的であった。ただ、新ルールの下では初回の違反に対するペナルティーは 1打罰になる。

一方、プロのトーナメントでは ツアー間で多少の差はあるが 後述するスロープレーに係わる競技規定が細かく決められており、それに従って、個人やグループの選手に罰則が課されることがあるが、ルールの性格上、アメリカの PGA などでは 罰則が適用されるのは 極めて稀なことであった。他方、ルールブックには プレーヤーは障害や気を散らすものがなくプレーできるようになった後、40秒以内にプレーすることが推奨されると記されている。一般のゴルファーの中には それぞれのプレーヤーに与えられる許容時間の限度は 40秒 MAX と考える者も居るかも知れないが、普段のラウンドで順番になってから 毎回 30秒以上ショットに時間をかけていたらスロープレーヤーとして嫌われてしまうペースである。ただ、アマチュアのゴルフでは 40秒以上かかることがあっても それを計測している人はいないし 警告を受けることもない。

ところが、プロの競技では 少し状況が異なるのが現状で PGA ツアーでは 毎回のショットにかける時間の計測も行われている。表のデータのように PGA の選手がショットにかける時間は平均で 38秒、グリーン周りのアプローチでは 50秒をかけるというデータがある。最近は デシャンボー選手をはじめとするプレーの遅い選手の問題が話題になっているが、PGA では 2020年からルールを改定し 新たに罰金制度を導入すると同時に "Slow List" という制度の導入も決めた。その背景となったケースの一つになるが 2019年 8月のノーザントラストで デシャンボー選手が 8-foot のバーディーパットに 2分以上かけたこともあった。
ショットタイプ 平均 (秒) 遅い人 速い人
全平均 38 45 29
ティーショット 43 52 33
グリーンへ 44 60 30
レイアップ 44 52 33
アプローチ 44 55 31
グリーン周り 50 63 38
パット 33 40 25
PGA ショットにかける時間 (PGA 平均・遅い人・速い人 10%)

プロの試合の場合はグループにスロープレーの警告が出されていなければ、原則、スロープレーのペナルティーが課されることはなかった。しかし、PGA の新ルールでは 過去のスロープレーの記録を基に "Slow List" というプレーの遅い選手 (2020年の当初は 20 〜 25名程度) のリストを作成し、その選手は 後述するアウトオブポジションの警告の有無に関わらず ショットに 60秒以上をかけると警告が出て、その後にスロープレーになればペナルティーが課せられると言うことだ。

アウトオブポジション

競技でグループに遅れが生じている状態をゴルフのスロープレーの観点からは アウトオブポジション (out of position) と言うが、通常、PGA や LPGA のトーナメントでは 前のグループとの間が大雑把に 1ホール以上開いた時点でアウトオブポジションの状態と定義されており、スロープレーに対する警告の対象になる。警告が出された後も改善が見られない時は 個々のショットに要する時間の計測がなされるが(そうした状態を英語では "put on the clock for being out of position" と言う)その結果、遅れが認められた選手には 競技規定に従って ペナルティが課される。

アメリカの PGA で過去にそのペナルティーが課されることは 長い間 ほとんどなかったが、2013年の全英オープンの三日目には 松山英樹選手がスロープレーにより 1打罰のペナルティを受けたことがあった。PGA では まず アウトオブポジションになったグループの選手にプレー時間の計測を開始する旨の警告がなされ、警告がなされたら、基本的に 各ショットに与えられる許容時間は 40秒。ただし、パー 3 のティーショットを最初に打つ選手、パー 4、パー 5 のセコンドショットを最初に打つ選手、パー 5 のサードショットを最初に打つ選手、グリーンの周りから最初にアプローチショットを打つ選手、グリーン上で最初にパットする選手には 60秒の許容時間が与えられていた。そして、それぞれのショットで その許容時間をオーバーすれば 規定に従ってペナルティが科されることになっていた。即ち、最初の許容時間オーバーには 警告、2回目には 1打罰、3回目には 2打罰、そして、4回目の遅れがあれば 失格である。松山選手には この規定に従ってペナルティが与えられる前に警告がなされたものと思われるが、それが言葉の壁などもあり、本人に明確に伝えられていたか否かは定かではない。この時点で、松山選手は 優勝戦線に加われるか 否かという状況に居た訳だから 大きな裁定であったことには間違いない。また、2013年のマスターズにおいても、優勝に関係のない順位に居た 当時 14歳の中国のアマチュア選手 (Tianlang Guan) に対して スロープレーに対する 1打罰のペナルティーが科され話題になったが、それ以前に このルールがルール通りに PGA で適用された例は 極めて稀であった。その適用例は 何と 1995年のグレン・デー (Glen Day) 選手のケースにまで 遡るものである。ただし、これも古い話になりつつあるが、2009年の世界ゴルフ選手権 ブリヂストンインビテーショナルの最終日に最終組で優勝争いを演じていたタイガー・ウッズとパドリグ・ハリントンに対してスロープレーの警告がなされており、スロープレーに対するペナルティーは課されなかったが、警告という事態に対して批判的なコメントをしたタイガー・ウッズに罰金が課された事件で スロープレーに対するツアー競技委員会の対応が話題になったことはあった。いずれにしても、近年は アマチュアゴルファーに対する注意の喚起という意味もあって スロープレーに対する罰則をルール通りに厳しく適用するような機運が高まり、状況はここ数年で少しづつ変わりつつはあったようだ。それでも、2017年の Zurich Classic での Brian Campbell and Miguel Angel Carballo の組に対するものや 2018年の PGA Tour Champions’ Dominion Energy Charity Classic で Corey Pavin に対して課された 1打罰があったくらいである。

女子プロのイエロー・カード制

イエロー・カード一方、日本の女子プロの場合は、毎年、当該ルール違反のペナルティで さまざまな物議を醸してきた。そんな中、日本女子プロゴルフ協会は 2012年より 新システムのイエロー・カード制を導入した。これによって、遅延プレーの撲滅を目指した訳だが、前の組との間隔が 1ホール以上開いた場合、ティーイングエリアで競技委員がイエロー・カードを提示するシステムである。それ以前は 口頭での指摘だったから 警告なのか注意なのかが曖昧で 気づかないままプレーを続け、結果的にペナルティとなるケースもあったそうで、改善を求める声が上がっていた。いずれにしても、女子プロのスロープレーに対する意識は高く、その警告を受けないようにと小走りで次のショットの所まで移動する選手を見ることも珍しくないほどである。

なお、LPGA の不当の遅延の定義は イエロー・カードを出された状態で 1) パットを含め 1打に 60秒以上を要した場合、または、2) 1ホールに要した時間が 1打平均 30秒の合計を 10秒以上上回った場合と定められており、前述の PGA の規定とは異なり厳しいものだ。つまり、2) の罰則に関しては パー 4 のホールをパーでホールアウトした選手の要した時間が 30秒 x 4 + 10秒 = 130秒を上回った場合にペナルティが課されるが、ボギーなら 30秒 x 5 + 10秒 = 160秒 までは ペナルティが課されないというものだ。さらに、もし、バーデーでホールアウトした場合には 30秒 x 3 + 10秒 = 100秒しかなく、それを超えた時間を要すれば ペナルティが課されると かなり分かり難いし 合理性を欠いたものになっていると言わざるを得ない。なお、前述の計算では 50センチ未満のパット、所謂、タップインで 10秒以下で打ったショットの所要時間は 計算に入れないという規定もある。 » 詳細(スロープレーのペナルティ / LPGA のルール裁定)

アマチュア競技の場合

個々の選手のプレー時間計測が不可能な月例会のようなアマチュアの競技では ハーフ 2時間 15分のような限度を設定していることが珍しくなく、前の組から 1ホール以上遅れ、且つ、この許容時間に遅れた場合は、そのグループの選手全員にペナルティー(旧ルールでは 2打罰)が科されるのが一般的である。その原因や経緯に十分な配慮がなされないまま、グループ全ての選手に罰が科されることも少なくない訳だから、必ずしも、フェアーなルールとは言い難い側面があるのは否めまい。ただ、新ルールの下では アマチュア競技のスロープレー (1回目) のペナルティーも 1打罰になる。

競技でのスロープレーに対する罰則がどのようになっているかを知らなかった人も多いことと思うが、プレーのペースについては 普段からスロープレーにならないような配慮をし、工夫をするようにして欲しい。慌てなくとも、自然と自分の番になったら 10秒以内にショットを済ませているのが普通というようなスタイルでゴルフができるようになれば ゴルフ仲間からスロープレーヤーと言われる心配もなくなるだろうし、競技で同伴競技者に迷惑をかけることもないだろう。プレー中に同伴競技者を急かすような言動は 誰もしたくないはずだが グループのプレーのペースが遅ければ そうしたことが必要になることもある。自分のスロープレーが 周りの人のそうした言動や雰囲気を作り出しているとすれば 極めて由々しき問題である。スロープレーが他のプレーヤーの迷惑になると言うことを全てのゴルファーが良く認識してプレーをする義務があると言うことだ。 » プレーファースト

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