ゴルフに明るい未来を
♦ ゴルフの人気低迷
日本における ゴルフ人口は 2011 ~ 2016年の 5年間で 17% 減、ゴルフ施設入場者数で 10% 減という試算がある。実は 日本人の約 30% 概ね 3人に 1人 は ゴルフを何らかの形でやったことのあるの経験者である。ただ、ゴルフ場に行って ゴルフをする人の割合は 年々低下し 2017年には その約 1/5、全体の僅か 6% 足らず。つまり、100人中に 30人も居るゴルフ経験者の内 24人は 止めてしまい 興味はあるが 今はやっていないと言うこと。しかし、テレビの ゴルフ番組が そこそこの視聴率を取ることからも ゴルフに興味のある日本人が少なくないことは 明らかである。
言うまでもなく、ゴルフは 見るだけで やらないと言う理由に 経済的な負担を挙げる人は 多い。また、ゴルフ未経験者に ゴルフをしない理由を尋ねると その回答の トップは お金がかかりそうだからで ある調査では その割合が 62.4% にも達している。近年、ゴルフ料金は 需要が低迷する中 供給過多が顕著になり 一時に比べれば 遥かに 手頃になったものの それでも まだまだ 高いと感じる人は 多く ゴルフ人口減少の最大の理由になっている。因みに、ある調査で ゴルフコースを選ぶ際に重視するものは 何か? との質問に 回答の上位は (1) 価格が手頃 (77.8%)、(2) アクセスが良い (58.7%) であった。
ゴルフ場のアクセスが 重視される最大の理由は 時間である。ゴルフは 一日がけと言うのが 日本では 当たり前のようになっているが、もし ゴルフを半日で済ませることが出来れば ゴルフの敷居は もう少し低くなる。ただ、色々な理由で そうはなっていない。この問題が 海外では ゴルフ振興の観点から 最近 良く話題に上るようになっている。スピード プレーの推奨と スピード プレーを促す ルール変更 さらには 9 ホール競技を普及させる努力などである。因みに、新ルールでは 1ホールの最大ストロークが設定されるが 最大ストロークのルールは 工夫次第で 初心者が ゴルフを面白いと感じ易いものにすることも出来よう。ただ その話は また別の機会にすることにしよう。
ハーフを終えた時に 昼食を取り 18ホールを 5 ~ 6時間かけて プレーをする。それだけが ゴルフではなく 今より手軽に 9 ホールを 2時間程度で済ませる ゴルフも 選択肢に加われれば 日本のゴルフ人口の減少に歯止めをかけるための 一助になる。手頃な ゴルフ料金と 時短ゴルフの実現が ゴルフ界を危機から救う鍵になるはずだ。
♦ ゴルフ場封鎖増加の危機
バブル期前後の ゴルフ人口 1400万人 ゴルフ場の数 2000 の時代と ゴルフ人口 700万人に対して 2300 もの ゴルフ場がある時代の考え方や制度が同じでは 上手く行かないのは 当然。今後も 若者のゴルフ離れが進めば ゴルフ人口 350万人 ゴルフ場 1000 という時代が 近未来に 到来するかも知れない。そうなったら 社会への影響 特に ゴルフ場の多い地方自治体への影響は 極めて 甚大なものになるだろう。気付いていない政治家や役人が多いだろうが 早急な ゴルフ場利用税の見直しをしなければ 大変なことになる。2015年から 2017年までの僅か 2年間に 93 ものゴルフ場が封鎖された訳だが そのペースで ゴルフ場が封鎖されるだけでも 20年後に 日本のゴルフ場は 1400 を下回ることになる。今後、団塊の世代が ゴルフから リタイアし 若者のゴルフ離れが顕著になれば ゴルフ場封鎖のペースは 今まで以上に加速され 10年くらいのスパンで ゴルフ場の数が半減することになっても不思議ではない。そんなことになれば 直接的な打撃を受けるのは まず 倒産に追い込まれる低料金のゴルフ場だが 倒産するゴルフ場のある地方自治体は ゴルフ場利用税交付金が その分減るだけでなく ゴルフ場や ゴルフ場関係者からの固定資産税や市民税の税収も失うことになる。
♦ 新たな財源確保
ゴルフ場利用税は 地方税法に基づき ゴルフ場が所在する都道府県が ゴルフ場を利用する人に対して 1日当たりの定額で課す税金である。ゴルフ練習場は その対象外だが 我々が ゴルフ場で プレーする時に支払う料金には 消費税が課されるだけでなく この税金が課される訳で ゴルフ場利用 1日に対する最高税額が 1,200円、標準税額 800円で、通常、高齢者を除く 成人が ゴルフをすると 600円 ~ 1,200円の利用税が ゴルフ場の等級によって徴収される。個々のゴルフ場の利用税額は 最高額の範囲内で それぞれの地方自治体が独自に決めることが出来 その税収の 7割は ゴルフ場のある市町村に交付される。当然のことながら ゴルフ場利用税交付金の額は ゴルフ人口の低下と ゴルファーの高齢化が進んだことで 非課税になる ゴルファーの割合が増え 年々 急速に縮小している。
つまり、地方自治体は 現在のゴルフ場利用税に しがみ付くのを止め ゴルフ業界 及び その関連団体と連携して ゴルフ場利用税を撤廃し それに代わる新たな財源を確保すべく 国に働き掛けるべきなのだ。その好機は 消費税 10% への切り上げのタイミングであろうが 問題は ゴルフ場利用税の税収の実績が反映されるような 別の財源を使った交付金制度の制定が可能か否かである。例えば、スポーツ振興交付金のような形で ゴルフ場があることで プラスに評価されるような名目の交付金の新設だ。ただし、交付金の公平性や合理性を満たしつつも ゴルフ場利用税撤廃とのバーター取引的な制度として成り立つようなアイデアを出すのは 簡単なことではないだろう。因みに、2014年の実績で 最も 多額の ゴルフ場利用税を受け取ったのは 千葉県市原市で その額は 6.5億円で 次いで 兵庫県三木市の 5.8億円。10位の地方自治体になると 2.2億円、20位で 1.8億円、1億円以上を受け取っている自治体は 63 あり 200位の地方自治体は 4017万円であった。近年の実績と将来の予測からすれば 少なくとも 400億円程度の財源は 必要になろう。
♦ ゴルフの明るい未来
ゴルフ場利用税は ゴルフ料金の低下にも拘らず 一定額で課されるから その料金に占める税の割合は 極めて 高くなっている。昼食と税金コミで 4000円 ~ 5000円といった低料金のゴルフ場でも 600円は 徴収される。仮に、5000円の料金のケースで その内訳を見ると 消費税 8% で 以下のようになる。
・ ゴルフ場利用税 600円・ 昼食 1000円(内消費税 74円)
・ プレー・フィー 3400円(内消費税 252円)
このケースの税金総額は 926円で 率にして 926/4074 = 22.73% である。仮に、このゴルフ場が もっと人を入れるために 4000円に 料金を下げたとしても 通常 ゴルフ場利用税 600円は 変わらないから 税金の割合は 866/3134 = 27.63% にもなる。さらに、各種割引や無償で提供しているサービス、手数料などを差し引くと 実際に ゴルフ場の懐に入る収入は さらに減額されることになる。そんな ゴルフ場が稼働率を上げるため、また、より多くの人に ゴルフを楽しんでもらう目的で ハーフ (9ホール) だけ プレーしてもらえるような 時間のない人向けのプランを企画し 2000円 で オファーしたとすると そのプランの税率は (600円 + 104円) ÷ 1296円 だから 54.32% にもなる。税金を徴収するためのボランティア活動になってしまう。
一方、ゴルフ場利用税がなければ ハーフ 1980円のプランで ゴルフ場は 消費税が 10% に上がったとしても 1800円が手元に残るから ゴルフ場の早朝や午後の稼働率を上げることも可能になるだろう。若者が 平日午後の ハーフ 1980円 プランを利用して ゴルフに親しむ。そんなことが 当たり前の時代が来れば ゴルフの未来に明るさも見えてくるだろう。