あるがままにプレー|ゴルフルール解説

Introduction

よく読まない人が多いと思うが、ゴルフのルールブックの冒頭には コースはあるがままに そして 球はあるがままにプレー (Play the ball as you find and play the ball as it lies.) という一文がある。実は これがゲームの原点である。また、その詳細は 規則 8 「コースはあるがままにプレー」規則 9 「球はあるがままにプレー」に明記されている。要するに、規則に別の規定がある場合を除き、コースも球もあるがままの状態でプレーされなければならない。ここでは そのルールについて 詳しく解説する。

ゲームの原点

ルールブックの一番最初には ゲームの原点 (central principles) として守るべきことが3つ書かれている。それは (1) コースはあるがままに そして 球はあるがままにプレーすること (2) 規則に従い ゲームの精神の下でプレーをすること (3) プレーヤーは 規則に違反した時に自分自身で罰を課す責任があること。

(1) に関しては 球をプレースするなどして打ち易いライにすることが許されなければ そのライは 球が転がって止まった時の状態という偶然性 (randomness) に依存することになるが、ゴルフの醍醐味は そこにあるという考え方に基づいている。その点に関しては 賛否両論あろうが 少なくとも ゴルフとは そうあるべきだという西洋哲学的な考え方の下に長年プレーされてきたゲームなのだ。そうなると 色々なライからのショットのテクニックの習得、それが重要になる。そして、その考え方が ゲームの原点にはあるのだ。一方、この点に関しては 規則で例外が定められており、そうした場合は あるがままとは 異なる場所や状態からプレーすることが要求されたり 許されたりすることがあるが、その詳細が 規則8と9 及び それに関連する規則に明記されている。ルールを正しく理解し 覚える上で「あるがままにプレー」という概念は 極めて 重要なものである。

あるがままの状態

プレーヤーは 原則 自分がプレーをしているコースの状態を受け入れなければならないが、ルースインペディメント、障害物、異常なコース状態などがプレーに影響を及ぼす時は その状態を変えて 規則が定める範囲内の処置を行うことができる。具体的には ルースインペディメントや動かせる障害物は 邪魔にならない所に動かすことができるし、動かせない障害物や異常なコース状態がプレーに影響を及ぼす場合は 規則が定める救済を受けられる。ただし、プレーに影響があるからといって 必ずしも コースやライの状態を変えたり、救済を受けられる訳ではない。その際に重要なのが 何がどのような影響を及ぼす時に それができるのかを ある意味 論理的に整理してから 覚えておくことである。

なお、正当な理由なしにライの状態を改善する行為に対しては 通常 一般の罰として2打罰が科されるが、ライを改善する目的で球を動かしても その誤りに気づき 球の元のライの状態を再現してプレーをすれば 球を動かした意図に拘らず ペナルティーは 球を動かしてしまったことに対する1打罰になる。



プレーに影響を及ぼすもの

原則、球の近くにある石ころや枯葉などの異物(ルース インペディメント)や動かせる障害物(人工物)などは 取り除くことが出来るが ルールがそのように定めていないものがプレーに影響を及ぼす状態にも関わらず それを動かせば ペナルティーが科されることになる。例えば、グリーンとガードバンカーの間のカラーに球がある時、その側にあるバンカーの砂を取り除けば ペナルティーになる。それは ルールがグリーン上以外にある砂をコースの一部でルースインペディメントでないものとして明確に定義しているからである。他にも、取れかかった状態で一部が地面に付いているターフや折れて落ちそうになっているがまだ木に付いている小枝なども同様の扱いになる。それらは コースの一部で それがプレーに影響を与えても あるがままにプレーされなければならないものだという考え方に基づいている。また、動かせない人工物は 通常 動かせない障害物として それがプレーに影響を及ぼす時は救済を受けられるが 競技委員会が それをコースの一部 (integral object) と定義した場合は 動かせない人工物が救済の対象にならないこともある。

一方、プレーに影響を及ぼす状態とは どういうことかについても ルールは明確に定義をしている。球のあるライ、プレーヤーのスタンス、スイング軌道が動かせない障害物や異常なコース状態に影響を受ける場合は 救済の対象になるが、プレーの線上に動かせない障害物があっても救済の対象にはならないのが普通なので 間違えないようにしなければならない。ただし、ローカルルールとして、プレーの線上に委員会が定める特定の動かせない障害物があった場合に救済を受けることができる場合もある。以下は プレーに影響を及ぼす状態と救済の関係について 分かり易く纏めたものである。

対象 救済あり 救済なし
球のライ 修理地、テンポラリーウォーター、動かせない障害物、自分の球で出来たピッチマークの中にある球などは救済を受けられる。また、ルースインペディメント、動かせる障害物は動かすことが出来る。 球の傍の植物 - 半分取れかかったターフなどを含む(注 1)、バンカーから飛び散った砂(グリーン上は例外)、ディポットの中にある球は動かせないし 救済の対象にもならない。
スタンス ルースインペディメント(小石など)と動かせる障害物は動かすことが出来、修理地、テンポラリーウォーター、動かせない障害物にスタンスがかかれば 救済が受けられる。 地面に埋まっている石、地面に生えている植物などを取り除けばペナルティだし、足で地面を何度も踏み固めて足場を作る行為も(バンカー内は 例外)ペナルティの対象。
スイング軌道 自分のスイング軌道上に動かせない障害物がありスイングに影響を及ぼす場合は救済が受けられる。 自分のスイングに影響を及ぼす植物(木の枝、葉っぱ、雑草など)の状態を変えればペナルティ。(注 2)
プレーの線上 グリーン上に球がある時はプレーの線上のテンポラリーウォーターは救済の対象になる。勿論、プレーの線上の砂も取り除くことは出来る。 原則、動かせない障害物やテンポラリーウォーターがあっても救済はない、また、グリーン上以外にある砂や泥はルースインペディメントではない。(注 3)
球をドロップ 救済を受けて球をドロップした結果、別の救済の理由が発生した場合は再度救済を受けることが出来る。(注 4) 球をドロップするエリアのラフを何度も足で踏んで草を寝かせたり、砂を取り除くなど行為などはペナルティの対象。

注 1 球の後ろの草を地面にクラブや足などで強く押し付けて、その影響を少なくするような行為は、ペナルティの対象である。(ただし、アドレスを取る時にボールの後ろに軽くクラブを置いてソールすることは許されている。)例えば、自分のスイングに影響を与える 球の傍のピッチマークやディボットの状態を(クラブを地面に押し付けるなどして)変更してしまえばペナルティになる。(マッチプレーでは そのホールの負け、ストロークプレーの場合は 2打罰)
注 2 練習スイング素振りなどでスイング軌道とその近くにある木の葉が 1つでも落ちれば 実質的なスイングへの影響の如何に係わらず ペナルティだが、球を打つ時のバックスイングやフォロースルーで木の葉が落ちても、そのスイングを完了して 球を打っていれば ペナルティにはならない。また、球を打つためにスタンスを取ってアドレスに入る(その目的に限った)動作で木の葉が落ちたり、枝が曲がったりしてもペナルティにはならない。
注 3 動かせない障害物が自分の打ちたいショットの飛球線上あっても(それがスイングで クラブが当たる所にある場合を除き)救済対象にはならない。また、カラーに球がある時など、自分の球がグリーン上にない時は スプリンクラーヘッドが自分のプレーの線上にあっても救済は受けられない。また、グリーン上に水溜りがあっても 自分の球がグリーン上になければ救済は受けられない。なお、グリーン上とカラーにバンカーから飛び散った砂があり、それが自分のプレーの線上の砂であった場合、カラーにある砂を取り除いてしまえば(グリーン上のものは良いが)ペナルティになる。
注 4 救済を受けて球をドロップする場合は その救済を受ける理由になったエリア内に球をドロップすることは出来ない。また、その外にボールをドロップしても それが転がって そのエリアに入った場合は 再ドロップとなる。

プリファード ライ

以上のように コースはあるがままに そして 球はあるがままにプレーすることが ゴルフの原点ではあるが ゴルフコースの状態が 悪天候の影響などで 悪い時に ライを改善してプレーすることを許す ローカル ルールが プリファード ライ (preferred lies) である。同じことを意味するゴルフ用語に ウィンター ルール (winter rules) また 6 インチ (リプレース) ルールがあるが 他にも よりカジュアルな言い方として 英語では  "pick / lift, clean and place" とか "roll your ball'" など、色々な言い方がある。また、ウィンター ルールの対義語として ノータッチ(和製英語)のルールをサマー ルールと言うこともある。

当該規定は 本来 ゴルフ場や競技委員が その日のコースの状態や競技の趣旨、性格等を考慮して設定するものだが、公式競技で プリファード ライの ローカル ルールが採用されることは 雨でコースがぬかるんでいる日などを除けば 基本的にはない。一方、会社のコンペなど、ハイ ハンデの人が多く参加する競技では 天候やコースのコンディションに関係なく採用されること 珍しくないものだ。プライベートのラウンドで(良いスコアを出易くして 楽しむと言う観点から)臨機応変、採用しても良いだろうが、ゴルフは 様々なライから 如何にボールを上手く打つことが出来るかを競うゲームであり 6 インチ ルールなどの下に プレーすることは そのゲームの本質を変えてしまう行為であることは 良く認識しておいて欲しい。

また、プリファード ライと一言にいっても その条件は一定でないし ルールで許される行為と 許されない行為があることを忘れてはならない。つまり、球のライを改善できる条件が (a) フェアウェイのみなのか、ジェネラルエリア(グリーン、ペナルティーエリア、バンカーを除く全てのエリア)なのか (b) どれだけ球を動かせるのかなどが プリファード ライ と一言にいっても 異なる訳だから、まずは その条件を確認する必要がある。最も一般的な条件は ファエアウェイ のみ 6 インチ(約 15cm)であるが、競技委員の判断によっては ジェネラルエリア、ワン クラブという極めて緩やかな条件が設定されることもある。なお、球を動かせる範囲を最初に球があった場所から ピンに近付かない範囲で 6 インチ以内にすることを(正式なゴルフ用語ではないが)6 インチ ルールと称し、仲間内の会話では フェアウェイのみ 6 インチ ルールで などとも言う。当該ルールの条件に従って 球を動かす時に 先ず 行わなければならないのが 球を拾い上げる前に それをマークすることだが、その後、球を拾い上げて、綺麗に拭き、球を好ましい状態でコース上に プレースするという一連の動作においても ルール違反を犯す可能性があるので 上記の注意点については 熟知しておくべきである。

では、カジュアルなラウンドをプリファード ライで プレーしている人は? 当然、自由であるが、競技ゴルフをしたいと考えていて コースの状態が特別悪くないのであれば 色々なライからのショットのテクニックを身につけるという観点からも「あるがままに」を大切にすると良いでしょう。

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