体重の掛け方と正しいボールの位置
そもそも、アドレス時の体重の掛け方一つを取ってみても 左右前後 そして 60/40 で 右 というような程度の差も考慮すると 試すべきことは 非常に多い。さらに、それをスイングを通じて どのように変えたり コントロールしたら良いのかなど 体重の掛け方だけを考えても 頭は 混乱しかねない。ましてや、スイング軸やボールの位置といったことも考えたら 訳が分からなくなってしまうのは 当然のことなのかも知れない。しかし、リピータブルなスイングを身に付ける上で 体重の掛け方、ボールの位置、スイングの軸といったテーマは 理解を深めておく必要のあるものだ。ここでは その観点から このテーマについて 少し突っ込んで考察してみよう。
♦ 体重の掛け方とスイング軸
とは言え、体重の掛け方とスイング軸には 密接な関係があるのは 紛れもない事実だ。例えば、右利きの人の場合、アドレスで 50/50 の体重で構え それから 頭を少し右に動かして 背骨を若干右に傾ければ 普通は 右足の方に体重がシフトするもの。しかし、その状態から 腰を左にスライドさせれば 背骨の傾きを そのままにした場合 体重は 左足の方にシフトする。つまり、頭の位置と腰の位置をそれぞれ変えることで 体重は 左右にシフトするのだ。
一方、どんな人でも 普通は トップからインパクトにかけて 腰を左にスライドさせるから ダウンスイング 特に その前半で 体重は 右から左にシフトするものだ。それをしなければ 所謂 明治の大砲になる。要するに、右足体重では ダウンスイングでの体重移動は 余程のことがない限り 応分に大きなものになるから どうしても スイング軸は 左に動き易い状態になる。左足体重の信奉者の理屈は その大半がゴルフで最も大切なことは ボールをクリーンに 芯で捉えることだから 体重シフトを少なくしてスイング軸のブレを最小限に抑えようと考えているのだ。
しかし、右足体重でも ダウンスイングの時に頭を少し後ろに動かすことで (STAY BEHIND THE BALL » 詳細) 体重移動を小さ目にすれば スイング軸のシフトは 最小限に抑えることが出来、その動きを何時もほぼ同じようにして 全体をコントロールすれば 十分クリーンにボールを打つことが出来る。何よりも 体全体のコントロールがし易いから 右足体重の方が理に適っていると考えるのが 右足体重信奉者の基本的な考え方だ。
正直なところ どちらの信奉者にも 上手な人は 多数居るので 片一方の考え方が正しいとか間違っていると言うものではない。ただ、上手な人に共通して言えるのは 体重移動は 大き過ぎず 軸のブレが小さいと言うことである。因みに、一時 話題になった スタック アンド ティルト打法などは (» 詳細) 左足体重の打法に分類されるものだが 体重の掛け方、頭と腰の位置などは 非常に斬新な組合せのボールの打ち方である。それ以前には 非常識で 試す価値さえないと思われていた組合せの発想に基づいた理論である。バックスイングで 体重を右足ではなく左足に移動させ この時 腰のシフトもしないで ダウンスイングでの体重移動を少なくして スイング軸のブレを最小限に抑える究極の左足体重打法だと言える。
♦ ボールの位置
ボールの位置は 以下の通り 回転軸の真正面が基本であるが 体重移動の影響を加味し スイングの弧の最下点がボールに対して何処にあるべきかを考えて微調整をする。アイアンショットと ドライバーショットでは 応分にボールの位置を その考え方に基づいて 左右にずらせば良いというロジックだ。なお、ショートアイアンでは 体重移動が小さいし 相対的に ダウンブローに打ちたいから 応分にボールは 右側に置くのが一般的である。
体重の掛け方 | スイング軸 | ボールの位置 |
~ 50/50 ~ | 最小限の動き | 左足踵内側前 ~ センター |
さて、ボールの位置に係わる理論は 大きく (a) 左足踵内側前派、(b) スタンス中央派に 二分される。まず、右図において (a) のスクールでは ボールの位置は 基本的に 常に (1) で クラブが短くなれば スタンスを (B2) のように狭くするので ボールの位置は 相対的に体の中心に近くなる。一方、(b) のスクールは クラブが短くなるに従って スタンスを狭くするが、ボールは 基本的にスタンス中央。ドライバーは (1) だが 他のクラブでは (2) (3) にボールを置く理論だ。(» 詳細)どちらの場合も ノックダウンの低いボールを打ちたい時は (3) や (4) のような所にボールを置くので ボールの位置は (1) ~ (4) までが選択肢になる。つまり、どの位、ボールをダウンブローに打ちたいのかなどと言ったことも ボールの位置に影響を及ぼすので 一言に 正しいボールの位置は これ という答えを出す訳には行かない。体重の掛け方、スイング軸、ボールへのアタックアングルなどと密接に係わっているからである。
もう一点、ボールの位置をスタンスの何処に置くかを決める上で知っておいて欲しいことに 左足の開き具合がある。どの位開いたら良いのかという議論は また別の機会にするとして 左足のつま先をターゲットの方に向けて 上のイラスト (A2) のようにするだけで スタンスは広く見えるし 左を向いているようにも見える。確かに (A1) から (A2) に 左足のつま先を開いた時に 肩のラインも 左の方に応分に向く人も居るだろうが そうした自分の癖も良く知っておく必要がある。左右のつま先を結んだ線 (B1-A2) が飛球線と平行になるのか それとも 左のつま先を開く前の (B1 - A1) のラインが飛球線と平行になるのか 肩のラインがどのようになるかと言うことも考えて、一度、注意を払って アドレスのあるべき姿を考え 頭を整理して欲しい。
また、スタンスの中央という概念も この左足のつま先の開き具合によって見た目には 大きな差が出るということを認識して欲しい。(A1) - (B1) のスタンスの真ん中は (4) であるが 左足のつま先を開いて (A2) にしたら、(3) がセンターで (4) は かなり右寄りにあることになる。踵で見れば センターなのに つま先で見ると違った結果になると言うことだ。
♦ 最後に
最後になるが 体重の掛け方に係わる一般論も ご紹介しておこう。右足体重派の常識的な考え方になろうが 短いクラブになればなるほど(右利きであれば)左足、そして、つま先側。逆に、長いクラブになればなるほど 右足寄りで 相対的には 踵寄り。この考え方は 飛ばす必要性のあるショットでは 左足体重でない方が都合が良いという理屈になるが 必ずしも そうとは言えない側面があるのも事実だ。
以上、一通り、体重の掛け方と正しいボールの位置について役立ちそうな話をしたつもりだが 冒頭にも述べたように 体重の掛け方、スイング軸のイメージ、腕の振り方、ボールの位置など、その組合せは 程度の違いも勘案すると無数にある。そうしたことを考えて色々な組合せを試してみるような練習は 良いが それを実戦のラウンドに持ち込んだら ショットの安定性や再現性は 著しく悪くなり ミスショットを多発し兼ねないから要注意だ。体重の掛け方やスイング軸と言ったことは 実戦では 考えずにスイング出来るようにすること。ボールの位置は 自分の理論とスタイルを持つ必要があり、それを実戦中に確認しながらプレーする必要があるが、体重の掛け方やスイング軸などについては スイングの時に考えずにプレーをすること。そうした観点から 体重の掛け方と正しいボールの位置については 一度は意識して研究をし 練習で色々と試行錯誤して 頭を整理しておいて欲しい。要するに、自分のスタイルを確立し、考えなくとも それが実行できるように練習をしておくことである。