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リブ・ゴルフツアー|LIV GOLF TOUR

Introduction
ゴルフ界に巨額の資金が流れ込んでいる。サウジ政府系投資ファンド (Public Investment Fund) が出資して 2021年に 新たな世界規模のゴルフツアー|LIV GOLF が創設され、第一回大会が この 6月 9 - 11日に ロンドン郊外の Centurion Club で行われた。その様子は 以下の動画通りで 優勝したのは 2011年・マスターズ・チャンピョンでもある 南アフリカの Charl Schwartzel で 彼が同大会で 手にした賞金は 475万ドル(約 6億 2,000万円)という 一大会の賞金としては 前代未聞の額であった。» LIV GOLF オフィシャルサイト

新リーグの概要

この新ツアーの運営組織は 発足に際し CEO に Greg Norman を起用している。そして、トップ選手の獲得のために サウジ政府系の投資ファンドから 20億ドル(約 2,600億円)の資金が投じられたとも言われている。しかし、サウジアラビア政府が これまで関与したとされるテロ事件、記者暗殺事件、また、多くの人権侵害行為などに鑑み、そうした政府|組織の 所謂 汚れた資金で運営されるゴルフ・ツアーが 世界の表舞台で堂々と活動することを許すべきではないという意見も少なくない。しかし、一方では 力のある選手が ゴルフをする場所(ツアー)を選ぶことができるという意味で リブ・ツアーの出現は より多くの収入(契約金と賞金)を得るチャンスを与えてくれる訳だから 多くのトップ選手は(どちらの選択をするにせよ)満更でもない気持ちで この事態を見ていることだろう。

そうした中、USGA 主催の全米オープンには リブ・ツアーに参戦した選手も出場が許されたが、PGA ツアーの対応は 厳しいもので、リブ・ツアーに参戦した選手は シード権の剥奪という処分を受けることになる。一方、全英オープンの主催者である R&A も 当面 2022年大会の出場資格を持っているリブ・ツアー参戦選手の出場を認めると表明した。ただし、マスターズ委員会は その判断を表明しておらず 来年の大会に リブ・ツアー参戦の選手の出場を許さない可能性がない訳ではない。

ところで、リブ・ツアーの初戦は 前述の通り 英国・ロンドンで 全米オープンの前の 6月 9日 - 11日というタイミングで行われたが、第2戦からは アメリカに戦場を移す。6月 30日 - 7月 2日に 西海岸・ポートランド|Pumpkin Ridge、そして、全英オープンの後、7月 29日 - 31日には 東海岸・ニュージャージー|Trump National Golf Club Bedminster、さらに、PGA ツアー最終戦のツアー選手権の後の 9月 2日 - 4日には ボストン|The International G.C.、9月 16日 - 18日に 中西部の大都市・シカゴ|Rich Harvest Farms と続く。その後は アジアに戦場を移して 10月 7日 - 9日に タイ・バンコック、そして、10月 14日 - 16日には サウジアラビア・ジェッダ|Royal Greens G & CC というスケジュールを経て、10月 27日 - 30日に アメリカ・マイアミ|Trump National Doral Miami - Blue Monster での最終戦となり シーズンを終えるスケジュールだ。つまり、前半戦は 全米、全英、ツアー選手権という大きな PGA の大会の合間を縫っての大会開催になるが、後半戦は PGA のフォールシリーズとの競合という形になる。

競技方法と賞金

リブ・ツアーは 1チーム 4名で構成されるチームが 12チームあり、48人の選手が 個人戦とチーム戦を同時に戦うことになる。各大会は ショットガン方式で 選手全員が 3日間・3ラウンド(54ホール)を同時にプレーして終了する。ショットガン方式は 一日の競技が 4 - 5 時間で全て終了する点が メリットであるが、それが大会を観戦するファンにとって 魅力的か 否かは 疑問視されている。いずれにしても、そうしたスタイルで行われる大会の賞金は 個人とチームに出されるが その額は 過去の PGA の大会の賞金額を大幅に上回るものである。前述のように、第一回大会に優勝したシュワーツェルは 個人の優勝賞金 4百万ドルとチームの優勝賞金の取り分 75万ドルの両方を手にした訳だ。このような巨額な賞金が 今後も継続して 出せるのかは 疑問視される点であるが ゴルフ選手にとって(少なくとも 短期的には)金銭的に最も魅力的なツアーということになる。因みに、初年度には 前述の 8試合が予定されており、その賞金総額は 2億 5,500万ドル(約 332億円)1試合平均では 3,188万ドル(約 42億円)と極めて大きい。加えて、有名選手のリクルートに多額の契約金をオファーしており、例えば、Dustin Johnson には 1.5億ドルもの契約金が支払われたと言われている。Tiger Woods は オファーを断ったそうだが、オファーされた契約金の額は 10億ドルとも言われている。他に、トップレベルの選手で リブ・ツアー参戦を決めた選手は 以下の通りである。

リブ・ツアー参加選手

当初から その中心的な役割を果たしたのが 2億ドルの契約金を手にした Phil Mickelson であるが、前述のように 2021年に世界ランク 1位だった Dustin Johnson、さらに、近年 ベスト 10 に入ったアメリカ選手では Brooks Koepka、Bryson DeChambeau、Patrick Reed(全員 メジャーチャンピョン)また、アメリカ人以外のメジャー優勝経験者では Louis Oosthuizen、Charl Schwartzel、Sergio Garcia、Martin Kaymer、Lee Westwood、Graeme McDowell などが居り、他にも Ian Poulter、Abraham Ancer、Kevin Na など、知名度の高い選手も含まれている。噂では Victor Hovland、Bubba Watson、Rickie Fowler らが 参加するかも知れないと言われている。日本人も 谷原秀人、木下稜介、香妻陣一朗が 一回大会に参加した。

因みに、Brooks Koepka は Dustin Johnson と仲が良いことで知られているが、彼も 1.5億ドルの契約金で移籍を決めた。また、Bryson DeChambeau は 1億ドルの契約金を受け取ったと報じられているが、他の有名選手も その実績、人気、近年の世界ランキングの順位などをベースに かなりの額の契約金を受け取っているものと思われる。大谷選手の来季以降の年俸予想が 5,000万ドル程度とされているから 如何に大きなオファーであるか 想像がつくであろう。野球やバスケのスター選手でも 5年とか 6年契約でも 1億ドルを超える選手は そう多くは居ないのだ。そうした金額を移籍するだけで(賞金は 別枠で)手にできる訳だから オファーを断る理由を見つけられない選手は 少なくないだろう。

ただ、以上の様に それなりのトップ選手が かなりの数参戦するが 見方によっては ピークを過ぎたと思われる選手が多く PGA ツアーに比べると そのフィールドは やはり見劣りすると言わざるを得ない。また、賞金の額を除けば、リブ・ツアーには PGA ツアー以上の魅力があるとは 言えないという見方をする人が大勢を占めていのも事実だ。加えて、多額の賞金を提供する リブ・ツアーが 採算の取れる興行として 長期的に継続される可能性は 低く、今後、どのような未来が待っているのかは 極めて 不透明と言わざるを得まい。

PGA と ゴルフ界の未来

こうした状況下、PGA は リブ・ツアーのスタートに反応する形で 2022/6/21 に その運営を見直すと発表した。最も大きな変更点は 2023 年の 8 大会を トップ 50人だけが出場できる予選カットなしのイベントに変更し それら全ての大会の賞金総額を 2,000万ドル以上に増額するとした。2倍近い金額に増額される訳であるが PGA ツアーの場合は 興行として採算が取れなければ 継続できない訳で その資金力において 限界があることは 否めない。

他にも、PGA ツアーは 大会運営の大幅な変更を計画しているが、その詳細については、また、別の機会に説明することにしたい。なお、リブ・ツアーは その大会の結果が 参加選手の世界ゴルフランキングに反映されるように 申請を行なったということである。ゴルフの大きな大会の出場権が世界ランキングをベースに決められる現状を考えると OWGR が リブ・ツアーに対して どの様なポイント配分をするかは(ランキングの対象ツアーとして認められない可能性もゼロではないだろうが)興味深いところである。

いずれにしても、今回の リブ・ツアーの出現によって ゴルフ界の様々な行事や記録が 将来どうなるのかが 不透明になっている。リブ・ツアーは そもそも 世界のゴルフ・ファンの関心をどこまで引くのか? そして、高額の賞金を払い続ける形で存続し続けることができるのか? もし、2 − 3年で消滅したり、賞金の大幅な減額になったら リブ・ツアーの選手には どんな選択肢があるのか? 一方、世界ゴルフランキングのようなものも影響を受けるだろうが、例えば、四大大会とグランドスラム、ライダーカップやプレジデンツカップなどは どうなるのか? そんな疑問も湧いてくる。今後のゴルフ界の動向からは 目が離せない。

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