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スコアに差が出る心理学のお話

Introduction
ステレオタイプ (stereotype) 即ち 個人が信じている社会通念的な固定概念に縛られた紋切型の意見や考え方 もしくは それに基づいた行動のことを意味する言葉であるが、今回は そのステレオタイプをはじめ ゴルフの心理現象とゴルフスコアに係わる 興味深いお話をすることにしよう。

ステレオタイプの脅威

女子生徒の算数テスト小学生の男女から成るクラスで 算数の試験の前に「女子生徒は一般的に算数の成績が男子生徒より悪い」ということを 先生が生徒に告げてからテストを行うと面白いことが起きる。そうしたことを 何も言わなかった場合に比べ 女子の算数のテストの点数が悪くなると言うのだ。女子生徒の多くは 先生のような信頼できる人が言ったことを鵜呑みにし 自分は女子だから算数は不得意なのだと ネガティブなステレオタイプによる信じ込みをする結果、テストの成績に影響が出てしまう。そうしたものの考え方と態度がパフォーマンスに悪影響を与える現象を 心理学の専門用語では ステレオタイプの脅威 (stereotype threats) と言う。何故そうしたことが起きるかの明確な説明は 出来ないようだが そうしたことが起きるという事実は その世界の学識者の間では 良く認識されていることだ。人により また 環境や状況により その影響は 異なるようだが 多くの場合 信じ込みが自信を壊失させたり 集中力を低下させるなどの影響を及ぼすからだと言われてれる。

さて、そのステレオタイプの脅威と呼ばれる現象は 実は ゴルフの世界で良く見られるのである。ご存知のように、ゴルフのハンデは ゴルファーの技量を示すものだが それが一種のステレオタイプの脅威を生む原因になる。例えば、ハンデ 15 の人の多くは そのレベルの人達からなる 一種の社会グループ (social group) への帰属意識を持つことになる。そして、勝手に そうしたゴルファーのイメージを作り上げ、例えば、よっぽどのことがない限り 70台は 出ないはずだと ネガティブなステレオタイプによる信じ込みをしていることが多い。そのハンデで 長年プレーをしていれば居るほど その信じ込みは 強くなる傾向があるようだが その結果 調子の良い日に そんなスコアが出そうになっても それまでのペースで プレーを終了すること 即ち 良いスコアが出ると信じられずに 自分のパフォーマンスを 台無しにしてしまうのだ。

自分に当てはまると思った人は 少なくないだろうが そうした人の多くは このステレオタイプの脅威のパターンに はまり込んでいる可能性が高い。誰でも 調子の良い日は 良いスコアは出るものだ という事実を信じることさえ出来れば 良いスコアが出る可能性は 高くなるのだが それが出来ない。何時もより良いスコアのペースで プレーが進行している時に そう思えるか 否かに 結果は 左右されるのである。自分の経験は このパターンに該当するかも と思った人は ネガティブ・ステレオタイプに陥らないために何をすべきかを考えてみて欲しい。

ショットの前に スコアのことを考えれば 自然とプレーに対する集中力は 低下する傾向にあるから その点にも 気をつけるべきだ。それが出来れば苦労はしないと思う人も居るだろうが まずは そのために スイングをする前に 深呼吸をして 自分の打ちたいショットを 確りイメージするということを 忘れずに実行し そのイメージ通りのプレーをすることに集中する癖をつけること。ボールを打つ前に 色々余計なことは しないこと。スコアのことを考えないこともそうだが してはいけないことを 一通り考えるようなことは 百害あって 一利なし。ボールの前で 素振りを何度もしたり 色々考えるために 時間を使っている人は そのルーティンを(イメージ通りのプレーをすることに集中するために)もっとシンプルなものにする工夫をして欲しい。

以上のようなケース以外にも ネガティブ・ステレオタイピングによるパフォーマンスへの影響は 様々な所で見られる。例えば、ある程度以上の距離のパットは 然程距離がなくとも 自分の実力では 運が良くなければ入るはずがないと考えたり、グリーンまでの距離が ちょっと長くなれば グリーンには 乗らないだろう といった態度で プレーをしたりするような 癖のある人が居る。そのような思考パターンと態度では 必然的に 集中力が低下するから パフォーマンスも期待できない。そんな時こそ 10% でも 20% でも起きる可能性のあるポジティブな結果のことを考え プレーに集中すべきなのである。

Paralysis by Analysis

失敗した時のことを考えることが プレーに悪影響を及ぼすことは 良く知られていることである。俗に言う(大事な場面で)ビビってしまうからだ。ビビるという言葉は おじけづく という意味で 古く平安時代から使われている言葉だそうだ。英語では ビビる ことを choke と言い 緊張や気後れから萎縮することは 洋の東西を問わず 大事な場面では もちろんのこと、然程 重要な場面でなくとも 不安が過ぎった時には 良く見られる現象である。特に、ゴルフでは そのレベルに関係なく OB のあるホールや ショート パットを打つ時などに良く起きることだ。

グレッグ・ノーマン少し昔の話になるが 1996年のマスターズで 三日目まで好調で 当時 世界ランキング 1 位だった グレッグ・ノーマン (Greg Norman) が 最終日に ビビッて優勝を逃してしまった。つまり、Greg Norman choked on the final day of the 1996 Masters. というお話だ。初日に 63 というスコアを出し その後 リードを 更に広げて 最終日に 2 位のニック・ファルドー (Nick Faldo) に 6打差をつけていたにも拘らず、ビビッて 78 というスコアを出し ファルドーに優勝を さらわれてしまったのだ。シカゴ大学の心理学者 シアン・ベイロック (Sian Beilock) によれば ノーマンの 1996年マスターズような結果は 俗に言う paralysis by analysis(分析による麻痺)によるものだそうだ。彼女によれば ある程度以上に熟練したゴルファーの場合 分析して その通りに コントロールしようと言う意識があまり強く働くと パフォーマンスに悪影響を及ぼすということだ。

瞑想|Meditation

ベイロックは 目をつぶって心を落ち着かせること 即ち 瞑想 (meditation) の効果に関する面白い実験結果も発表している。その実験では 大切な試験の前に 10分間の瞑想をしたグループと そうでないグループのテスト結果を比較したのだが 両者は 同等の学力を有するグループであるにも拘らず 前者は 100点満点で 87点、後者が 82点という 大きな差が確認されたと言うのである。また、その分析しようとする意識をなくすための工夫として 例えば 口笛を吹くなどをすることで ショート パットのような 比較的 単純で 繰り返し行う動作を要するタスクでは そのパフォーマンスが改善されることも 明らかになっている。

以上、ステレオタイプの脅威 (stereotype threats) や分析による麻痺 (paralysis by analysis) といったようなことが ミスを誘発することがあるという事実、そして、それに対する様々な対策 即ち 意識の変革、瞑想 (Meditation) や口笛などが 効果を発揮するという お話でした。

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