ゴルフクラブのバランス
♦ スイングウェート (SWt)
ドライバーのような長いクラブは軽くなければ 早く振ることが出来ないが、逆に、ウェッジのような短いクラブは 軽ければ安定感を欠いて 振り難いと感じるものだ。例えば、男子用のドライバーは 少し重めのクラブでも 330g くらいで 軽めのものは 300g 以下。一方、ウェッジは 重めのものが 470g くらいで 少し軽めのものは 440g 程度である。つまり、どんなクラブでも 40% 〜 45% ウェッジの方が重く出来ている訳だが、そうした総重量だけを管理しても 一定のフィーリングの使い易いと感じる ゴルフクラブは 作れないのだ。前述のバランスを定量的に管理する必要があるのだが SWt と言うシステムは そのツールとして考案されたものである。
理論上の SWt は 最も軽い A0 から 最も重い F9 or H0(計測法によって異なる - 詳細後述)までのスケールで表示されるが、殆どのクラブの SWt は B8 から E5 の間で(下記スケール参照)一般的な男子用のクラブは C7, C8, C9, D0, D1, D2, D3, D4, D5, D6 の SWt のクラブが中心だ。写真右は その計測器の一例で、下は 英語の動画だが SWt についての説明で計測器がどのように使われるかを理解できる内容なので そちらも参考にして下さい。
♦ 14 インチ・バランス法
近年、SWt は 14 インチ バランス法で算出されるのが一般的である。それは クラブのグリップ エンド側に 錘をつけて バランスを取った時に グリップ エンドから 14 インチ(約 36センチ)のポイントを 基点に クラブのバランスが取れるようにするために どの位の重さの錘が必要かで その値を決める方法だ。因みに、それが 15.25 オンス(約 474g)であれば D0 になる。(右図参照)前述のような計測器を使用して チェック出来るが グリップ エンドから 12 インチを基点に測る方法であれば 12 インチ バランス法と言うことになる。一般的に アイアン セットは 短いクラブほど(7番より 9番の方が という意味)総重量が重くなるが 多くのアイアン セットは その SWt が 統一されるように作られている。 » クラブの重量
戦後まもない頃 初めて日本に 導入されたのが 12 インチ法の計測器だそうで、その後、長い間、唯一のバランス計として 日本では これが使われたが、20年ほど前に 米国で主流の14 インチ計が日本でも発売になり普及したことで、現在では 14 インチ法が主流になった。(ただ、日本では後発だが 14 インチ法の方が その歴史は古い。)当然のことだが 計測結果は この二つの方法で 多少異なり、14 インチ法で D2 のクラブが、12 インチ法では D3 というような結果になることがある。古いアイアン・セットには 12 インチ法の表記のものもあるが、基本的に 12 インチ法より 14 インチ法の方が 短いクラブは軽く、長いクラブは重くという結果になるはずだ。
♦ バランスの良いクラブ
ところで、一般に良く用いられる尺度としては、男子のアベレージ ゴルファーのアイアンの SWt は D0 くらいを目安に、そして、力のない人は C7 - C9 くらい、また、力のある人であれば D2 - D3 くらいのセットが適当と言われている。ただし、ウェッジは SWt の重いものが多く、D4 - D5 のクラブも少なくないが、C7 のような軽いアイアンセットを使っている人が D5 のように重いウェッジを使うのは感触の差が大きくなり過ぎるので 避けた方が良いだろう。因みに、フォーティーン、ミズノ、キャスコなど、日本メーカーのウェッジは D1 - D3 の比較的 軽めの SWt のものが多い。
同様に、アイアンとウッドの SWt の違いにも注目して、自分のセットのクラブのバランスの調和について 考えてみても良いだろう。ただ、一方で、総重量を軽くして SWt を重く(極端な例では、E3 などと)したような特殊なクラブもあるので SWt だけを見て判断するのではなく、総重量にも 同時に 注意を払う必要がある。
また、女性用セットの SWt は C0、場合によっては B9、B8 と言った軽さのセットも少なくないが、比較的力のある女性は シニア用 もしくは 比較的力のない男性用のクラブ(例えば、C の数字の大きなもの)を使った方が良いかも知れない。
なお、SWt は 1) グリップの重さ、2) ヘッドの重さ、3) シャフトの重さ(異なった バランスポイントのシャフトに変更する場合は別)更に 4) シャフトの長さを変えることで、下表のように 変化することになる。
変更するアイテム | 増量(減量) | スイングウェートの変化 |
グリップの重さ | 3g ~ 4g | 1 point 減(増) |
ヘッドの重さ | 2g | 1 point 増(減) |
シャフトの重さ | 10g | 1 point 増(減) |
シャフトの長さ | 0.5 インチ | 2 point 増(減) |
例えば、同じ重さのヘッドとグリップのドライバーでも 10g 重いシャフトのドライバーの SWt は 1 ポイント重くなる。45.5インチのシャフトのドライバーで そのヘッド重量が 196g だとした場合、標準的なグリップ (52g) とテープ (2g) を使えば、55g のシャフトで その SWt は D1、65g なら D2、そして、75g では D3 といった具合になる。
また、リシャフトで シャフトを 10g 重くするが SWt は 変えたくないと言う場合は(その考え方が 理に適っているか どうかは 別にして)グリップを 3g - 4g 重いものにすれば SWt を同じ値にキープできるという理屈だ。シャフトの長さを 多少 長くしたり、短くしたりする場合も グリップの重量を変えることで 同じ SWt を キープすることは可能である。
ただし、注意して欲しいのは SWt が あくまでも 重さに係わる一つの尺度でしかないと言うことである。例えば、SWt が軽く 総重量が重いクラブと SWt が重く 総重量の軽いクラブのどちらが自分に合っているのかを考える上で 考慮すべき要素として利用すべきデータの一つと考えるべきであろう。因みに、最近の市販のドライバーは SWt が重く 総重量の軽いクラブが 相対的に多くなっているようである。裏を返せば、そうしたクラブが アベレージ ゴルファーには 好まれる傾向がある とも言えそうだ。
♦ より広義な意味での「バランス」
ところで、クラブを振った時の重量の感触はシャフトのスペックに大きく影響されることも知っておいて欲しい事実だ。シャフトが柔らかくなると ヘッドは重く感じるものだから(逆も また同様)スティッフ (S) のシャフトを長年使った人が レギュラー (R) のシャフトに変える時などは SWt を 少し軽くして見ることも 検討して見ると良いだろう。つまり、現在使用しているアイアンセットのシャフトが S で、その SWt が D2 だとして、それから R のシャフトのクラブに買い換えるのだとすれば、D0 くらいの SWt のクラブが振り易いと感じる可能性が高いと言うことだ。実際、そうした組み合わせになっているセットが多いはずである。
また、シャフトのトルクについても同様のことが言える。全ての条件が同じであれば ロートルクのシャフトの方が硬くて軽く感じるはずだから、そうした観点からの調整が上手く機能する可能性も高い。スチールシャフトのアイアンセットからカーボングラファイトのシャフトのセットに買い換える時などは、クラブの総重量、シャフトのトルクなどが大きく変わるから そうした点も含め、全体のバランスが どのようになっているか 十分 注意を払うべきだろう。
さらに、シャフトのキックポイント(調子)も 全体のバランスに変化を与えるものだ。先調子のクラブの方が ヘッドの重さを感じ易い訳だから、常識的には先調子のシャフトであれば SWt は軽めの方が合う可能性が高いという考え方になるだろう。ただし、個人の好みが その通りになるか否かは 微妙なところではある。
いずれにしても、クラブ選びは 全体のスペックを どのようにバランスさせれば良いのかを考えることが重要と言うこと。個々のスペックは かなり異なるが、全体としては 似たフィーリングになる組み合わせがあり得ると言うことだ。スイングウェートに係わる知識も そうした観点から 自分に合ったクラブ選びの一助にして下さい。