チャンスの生かし方|ゴルフ教室
♦ 好運と不運
ゴルフでは 運や不運に左右されたと思われる出来事が良く起きる。フェアウェイなのに ディボットの中にボールがあったり、ボールが思わぬところで 変な方向にキックしたり、一本だけある木がプレーの妨げになるなど、運が悪いと思われることは しばしば起きる。一方、OBと思われたボールが木に当たって フェアウェイに出たり、打ち損じたと思ったパットが予期せぬ曲がり方をして 入ってしまうこともある。しかし、そんな好運や不運に どう向きあって プレーすべきかを真剣に考えたことがある人は あまり居ないだろう。
例えば、一緒にプレーしている人は 運が良いのに 自分ばかりが どうも運が悪いといった具合に考えたことはないだろうか。そして、そうした考え方をしたことで 集中力を欠き ミスショットをしてしまう。やってはいけない思考パターンの一つだが、さらに、そうしたミスをしたことから 悪いゲームの流れに引きづり込まれてしまう。よくあるパターンで 自分は 運が悪いという考え方をすればするほど そうしたことは起きるものである。しかし、確率論的には 誰にも そして どのショットにも同じように運の要素は 影響を与える訳で 良い目が出るか 悪い目が出るかは 偶発的な出来事である。運の良い時 悪い時、チャンスとピンチがやって来る確率は 長い目で見れば 誰にとってもほぼ同じになるのだから それらにどう対処すべきかを考える。そして、そうした偶然に影響を受けることが 必然なのだから 偶然に備えることは 出来ないと考えるのではなく、偶然が起きるという必然に備えるという考え方をすることで 結果は 大きく変わるのである。そこで考えて欲しいのが チャンスをものにするための心構えだけでなく 不運やピンチを乗り切るための術(テクニックとマネジメント)と発想法を身に付けることである。
♦ 不運の中に潜む好運の種
フェアウェイのディボットのような運が悪いことが起きた時に 簡単に運が悪いと捉え 諦めて何の工夫もしないのでは 十中八九 良い結果は望めないだろう。それだけではなく、その結果に腐って ゲームの流れを悪くすれば ダメージは 1打以上のものにもなり兼ねない。一方、どんな打ち方をすることによって どのような結果が予想されるのかを考えると同時に ピンチをチャンスに変える機会と捉えて対処すれば その後の展開は 驚くほど違ったものになる。次のショットの価値を最大にすることが重要なのは 言うまでもないが、このピンチを乗り切ることには ゲームの流れを自分の方に引き寄せる力があると考えて そのプレーに集中すべきなのである。仮に、このディボットからのショットで グリーンを捉えることができずに最終的にボギーになったとしても ボギーを回避するための努力のプロセスが納得の行くものであれば 自分の中の流れがネガティブになることはないはずである。他方、ここで 上手くパーをセーブ出来れば ゲームの流れは自分の方を向いてくる。つまり、ピンチがチャンスに変わる瞬間になるのである。
運が悪いと思われる状況でも そこに残された好運の部分に目を向け それを生かして好結果につなげると言う考え方が出来るようになると ゴルフのラウンドは 常にチャンスの連続になり 前向きな思考と姿勢で取り組むことが出来るようになって 良い結果の出る確率が高くなる。我々が経験するものは ある意味 全て 偶然 起きる出来事である。人生も ゴルフも その偶然とどう向き合うかだ。チャンスを生かすも 殺すも 自分次第と言うこと。そして、不運と思われる状況や逆境にこそ 本当のチャンスが隠されている可能性が高いのである。不運な状況を楽しみに ゴルフをしたら もしかして 不運は やって来ないかも知れないが。
とは言え、ものの考え方を変えるだけで 簡単にピンチをチャンスに変えられるほど ゴルフが甘くないのも事実である。例えば、ディボットからのショットは どうしたら上手く打てる可能性が高くなるのか。また、そんなショットでは どんなミスが出易いのか。そうしたことに対する研究をすることが重要なのは 言うまでもない。ディボットからのショットを含め 様々な状況を想定し それに備えるための練習しておく。トラブルからの脱出だけでなく、様々なライからのショットの打ち方を研究すること。球が少しだけ沈んでいる時に どんな打ち方をするのがベストなのかといった研究をしたことがある人は少ないだろう。しかし、そうしたショットの引き出しを増やしておけば ピンチがチャンスになる可能性は 大きくなると言うことだ。
♦ セレンディピティー
セレンディピティー (serendipity) という言葉を ご存知だろうか。ゴルフ用語ではないが ゴルフの上達に関係ある概念だ。この言葉は 翻訳することが最も難しい言葉の一つと言われる位で その意味を 正確には 説明し難いものだが 敢えて 短い言葉で説明すると「偶然に価値ある発見をする能力 または そうした発見をすること」という意味だ。英々辞典には The faculty (or fact of occurrence) of making fortunate discoveries by accident. などと説明されている。
科学の発展に貢献した 多くの偉大な発明や新たな発見は セレンディピティー的 (serendipitous) な要素を多く含んでいると良く言われる。この世の中に 単なる偶然だけによる発見などないと言えるが、逆に、そうした要素に縁のない発見や発明は 極めて少ないはずだ。何か新しいことを発見するプロセスには アッと思うような 偶発的な出来事が含まれているものである。アイザック・ニュートンが 偶然 木から落ちるリンゴを見て 万有引力を思いついた という有名な話があるが それは 以後に 彼を知る人が ニュートンが 如何に 日常に起きることに関心を持ち そこから様々な発見や理論の構築への着想を得ていたか という彼の賢さを表す例として言い伝えた話しである。発見が偶然だったのではなく 当に ニュートンのセレンディピティーを言い表した話なのだ。偶然 落ちたリンゴにヒントを得た発見であったが 発見は 偶然 起きた訳ではない。prepared mind が そこにはあったはずだ。
以上のように セレンディピティーには 偶然の要素がある訳だが 偶然のチャンスや発見は 往々にして無駄に見過ごされ兼ねない。科学の世界では 勿論のこと ゴルフの上達においても 常に 偶然の発見や ヒラメキを価値ある結果に導く工夫と努力がなされなければ 良い結果は 望めない。同時に、そうした偶然に遭遇する様々な努力を 常に 惜しまないことが重要なことも忘れてはならない。ゴルフの上達は 練習やラウンド中 場合によっては ゴルフをしていなくとも ゴルフのことを考えている時に気が付く ある意味 新たな偶然の発見 そして それらの発見から どのように体を動かして どんな風にクラブを振れば良いのかを見つけ出して行くプロセスなくしては 望めないものである。つまり、常に 偶発的な発見やヒラメキを大切にし 好奇心を持って色々なことにチャレンジし セレンディピティーを大切にすることが重要なのである。
ゴルフを学ぶ時に 幾らやっても上手く行かないレッスンもあれば(たまたま)驚くほど 上手く行ったというようなこともあるだろう。しかし、上手く行かないレッスンを簡単に駄目と決め付けるのではなく 何故 自分の場合は 上手く行かないのだろうと考えて見ることで すぐに上手く行ったレッスンより 得るものが大きなレッスンになる可能性もある。
♦ チャンスを生かす極意
基本的なことから高等テクニックまで どんなことを学ぶにせよ 当たり前と思われることでも何故なのかという疑問を持ったり、もし こうしたら どうなるのかといった実験をして見ることなども 決して 無駄にはならない。ただ ゴルフの教本で読んだり、レッスンで教えられたとおりにクラブを振るだけではなく、何故 そうするのかを考えて そこから さらに何かを発見したり 学んだりしようとする姿勢が大切なのだ。
ゴルフの本に書いてあること、上手な人が教えてくれることには 必然性のあるものが多い。つまり、こうすれば 必ずそうなるといったもので 結果が因果関係に支配される理論や法則である。しかし、何の因果関係もなく 予期しない出来事が起きること、つまり、偶然(たまたま)気付くことや感じ取った感覚などを大切にし 工夫をすることも ゴルフの上達には 欠かせないものだ。また、ひどい目にあった時に ただ悔しがるのではなく 自分には 何が欠けていたのかを考えてみる。そうしたことが 後々 差になって現れるのである。チャンスは 思わぬところ(例えば、不運と思われるような出来事)に潜んでいると言うこと、そして、偶然に備える心構え (prepared mind) が大切なことを忘れずに ゴルフも普段の生活もチャレンジして欲しい。それこそがチャンスを生かす極意だから。