国内 ゴルフツアー|シード権と出場資格
♦ シード選手
男子の試合は 日本ゴルフツアー機構 (JGTO) が主催しているが、2015年から 所謂 シード権に関する新たな制度が導入された。それまでの 賞金ランク 70位までというシステムから 賞金ランク 60位までは「第 1 シード」、61~75位は「第 2 シード」という制度になり、第 2 シードの選手は 前半戦の多くの試合には 出場できるが、リランキングの対象になり、中盤までの成績次第では 終盤の試合に出られなくなるというシステムである。
一方、日本女子ツアー (LPGA of Japan) も 同様に 賞金獲得額上位 50位まで(QT は 上位 35位まで)の選手に 翌年のシード権が与えられるシステムだったものが 2018年からは 第 2 シードと リランキング制を導入し 賞金ランク 51位 ~ 55位の選手にも 来季の出場権が前半戦に限って与えられるようになった。さらに、2022年からは 賞金獲得額に代わって メルセデス・ランキング(総合的な活躍度を評価するランキング制度)がシード権付与の基準として使用されるようになった。
他方、男子ツアーは 通算 25勝、女子ツアーでは 通算 30勝以上をあげると永久シード権が与えられるが、そのシード権を持つ男子選手は 青木功、(杉原輝雄)、尾崎将司、倉本昌弘、中嶋常幸、尾崎直道、片山晋呉の 6 (7) 選手、女子選手は 樋口久子、大迫たつ子、涂阿玉、岡本綾子、森口祐子、不動裕理の 6 名である。また、男子の場合、日本プロゴルフ選手権大会、日本ゴルフツアー選手権、日本オープンゴルフ選手権競技、ゴルフ日本シリーズの優勝者には 5年間のシード権、そして、それ以外の公式戦の優勝者には 2年間のシード権が与えられる。加えて、年間 2勝した選手はその翌年から 3年間、年間 3勝で 4年間、年間 4勝以上で 5年間のシード権が与えられる。女子の場合も 男子とは多少異なるが 同様のシステムがある。
♦ 下部ツアーと QT
トーナメントに出場する権利の話をする上で欠かせないものに 下部ツアーのトーナメントと クォリファイングトーナメント (QT) がある。男子のチャレンジトーナメントは 米国のコーンフェリー (ウェブドットコム) ツアーに相当する JGTO ツアーの下部組織で 年間 10 試合程度の試合を行なっており、その年間賞金王には 翌年の JGTO(1部)ツアーのシード権が、また、上位 10名には 翌年のリランキングが行われるまでのツアー前半戦への出場優先権が与えられる。一方、QT のファイナルは 毎年 12月に シード権のない選手が 出場資格を獲得するために 6 試合のストロークプレーで争う場で 上位 35名に翌年のツアートーナメント、また、上位約 120名に 翌年のチャレンジトーナメントの出場資格が与えられる。
一方、女子の下部ツアーは ステップアップツアーと呼ばれ 2018年は 年間 21試合、賞金総額 4億円を超える規模のリーグである。ただ、男子のシステムとは 少し異なり 賞金ランキング 1位の選手には 翌年のレギュラーツアーのリランキングまでの出場権が与えられるが、2位 〜 5位までには 10月下旬から行われるセカンド QT、サード QT を免除して ファイナル QTへの出場資格、6位 〜 10位と優勝者には サード QTからの出場資格が与えられるだけで QT での合格以外に レギュラーツアーのシード権を獲得する方法は 極めて限られている。
♦ ゴルフツアーも狭き門
男子は 上位 75位、女子では 上位 50位というとかなりの数と思う人もいるだろうが、実際には 国外から参戦していて実力のある選手優勝する力のある外国選手も多数入る訳だから 国内選手に回ってくる枠は 3/4 くらいしかない。
また、ゴルフの場合は 選手寿命が長いから シニアになってからも レギュラーのツアーで優勝するような人も 比較的稀ではあるものの 居る訳で 人によっては 20年も 30年も コンスタントに賞金ランキング上位に入る選手が居るのも事実だ。従って、毎年ツアープロになる選手が何人も居るだろうが 継続して ツアープロとして活躍できる選手は その中の 2 ~ 3人という計算になるはずだ。野球などに比べると 運動部の選手として本格的な競技環境で このスポーツをする競技人口という意味での分母は小さいだろうが、分子 即ち プロとして活躍できる選手数も少ないから そうした意味では どちらも 狭き門ということになる。
♦ 賞金獲得額
2016年の男子ツアープロの(国内)賞金獲得額を見ると 75位の選手の賞金獲得額は 1266万円、60位 = 1803万円 、50位 = 2338万円 、25位 = 4000万円、10位 = 6160万円、1位 = 2億 790万円(池田勇太)となっている。因みに、2010年の 70位の選手の賞金獲得額は 1129万円、50位 = 2170万円 、25位 = 3689万円、10位 = 6985万円、1位 = 1億 8110万円(キム・キョンテ)で、2009年の男子ツアープロの(国内)賞金獲得額は、70位の選手が 1265万円、50位 = 1929万円、25位 = 4237万円、10位 = 7088万円、1位 = 1億 7453万円(石川遼)という結果であった。男子国内ツアーは 2007年に 5試合も 試合数が減って、一時は 過去最少の年間 24試合にまでなったが 現在までに 1試合増の年間 25試合 (プラス 東南アジアで行われる 2試合) になっており 年間賞金獲得額は ほぼ その試合数の増減に比例して変化してきた。
一方、国内女子ツアーでは 2016年の賞金獲得額で見ると 50位の選手の賞金獲得額が 2014万円、25位 = 3970万円、10位 = 7088万円、1位 = 1億 7587万円(イ・ボミ)だった。また、2010年は 50位の選手の賞金獲得額が 1565万円、25位 = 3453万円、10位 = 6450万円、1位 = 1億 4507万円(アン・ソンジュ)、さらに、2009年の国内女子ツアーの賞金獲得額で見ると 50位の選手が 1483万円、25位 = 3526万円、10位 = 5067万円、1位 = 1億 7502万円(横峰さくら)である。因みに、2016年 米国女子ツアー賞金王のアリヤ・ジュタヌガン (Ariya Jutanugarn) の賞金獲得額は 255万ドル(約 3億円)で ドル高になったこともあって 日本の賞金女王の二倍近い額であった。しかし、賞金王の賞金獲得額が 200万ドルに達しない年もあるから 日米の差は 近年 米国女子ツアーの試合数が減ったことで小さくなっている。
♦ 女子ツアーの躍動
このように、日本の女子ツアーが世界的に見てもトップクラスの高額賞金を稼げるツアーになったことで 韓国選手を中心に実力のある外国人選手が多数(50位までの賞金シードに 10 〜 15名程度)プレーするようになったことは喜ばしいことである反面、日本人選手にとっては 競争激化という厳しい側面も生み出している。日米間の格差が大きい男子ツアーとの違いでもある。加えて、選手寿命と言う意味でも 賞金ランキング上位に入るベテラン選手の数は 少なく、少なくとも今までは 結婚、子育てなどといった環境の違いもあろうが 比較的 若い時点で(気力、体力共に衰える傾向があると考えられ)引退か 賞金が稼げなくなる選手が多いという点も男子ツアーとの違いであろう。
しかし、女子は 男子とは 逆に 近年は 年々試合数が増え、賞金総額が大幅にアップしているが 人気のバロメーターとなるテレビ視聴率でも国内女子ツアーに比べ国内男子ツアー視聴率が低いといったような現象が見られる傾向にも起因している。さらに、2019年の AIG 全英女子オープンに渋野日向子選手の優勝 また 東京オリンピックで 稲見稲見萌寧選手が銀メダルを獲得したことなどで 女子ツアーへの注目がさらに高まっている。一方、男子ツアープロにも 大型スター選手、強い若手選手が出現してきているが 人気選手の海外ツアー参戦による国内ツアーの魅力低下という結果にもなっており、今後、国内男子トーナメントの試合数と賞金額が どうなるかは 予断を許さない状況だ。