世界のプロ ゴルファー
♦ プロとアマチュア資格
前述のように、ゴルフを教えて報酬を得ること、また、スポンサーからの契約金、競技の賞金などを生活の糧にしてる人達が、ある意味、プロ ゴルファーだが、それに該当する行為で収入を得た場合は(少額な賞金などに対する例外規定はあるが)R&A、USGA、JGAなどが定めるアマチュア規定に反することになり、アマチュア ゴルファーとしての資格を失うことになる。 » JGA アマチュア資格規則
そこで、アマチュア ゴルファーでないゴルファーが プロゴルファーかと言うことになるが 実は 必ずしも そうとは言えない。通常は PGA や LPGA などが定める資格認定試験(能力に応じて 等級がある)に合格した者が プロゴルファーと呼ばれるに相応しい人達である。また、そうした資格がなくとも、PGA と そのメンバーツアーが統括する Q スクールで 上位に入ったり ツアーで活躍して シード権を持っている人達は もちろん プロゴルファーである。
♦ 日本と欧米の違い
日本では あまり一般的ではないが、欧米では 各ゴルフクラブ、ゴルフ場に ヘッドプロ と アシスタントプロといった プロゴルファーが居て、ゴルフを教えることの他に プロショップの運営や ゴルフイベントの企画、運営など、ゴルフクラブ運営上の重要な役割を果たすことが珍しくない。プロショップの業務には 予約の受付や プレーフィーの徴収も含まれるが、そうした仕事をする人の多くは PGA のメンバーか、そうした仕事に従事するための知識や技能を身に付けるための(PGA 以外の)組織や制度の下に教育を受けた人達である。日本のゴルフ場では 欧米のプロショップとプロゴルファーの役割といったシステムではなく、一般のゴルフ場従業員が その業務を行うのが普通で そこは 文化の違いだと言っても良いだろう。
♦ 世界のプロゴルフツアー
ワールド ゴルフ ランキングに登録されている選手の数は 2022年 9月の時点で 7964人に上るが ランキングの最下位は 2458位(獲得ポイント 0)で 5500人以上の選手が そのステータスに居る。つまり、ワールド ランキングの対象になるレベルの競技に出場している選手の数は(アマチュアを含むが)約 8000人で その数に近い選手が ツアー プロか それを現実性のあるレベルで目指して ゴルフをしている人達だと言っても良いだろう。
一方、世界ランク上位の選手の多くは アメリカ もしくは ヨーロッパのツアーでプレーをする選手であるが ミニ ツアーまでを含めると 世界には 20以上のプロ ゴルフ ツアーがある。日本のツアー (Japan Golf Tour) は PGA Tour of Australasia、及び、南アの Sunshine Tour と共に 世界 5大ツアーの一つである。International Federation of PGA Tours という組織が 1996年に創設され、近年は この 5大ツアーを含む 世界の主要プロ ゴルフ ツアーの活動が統括されている。他には、China Golf Association、Korea Professional Golfers' Association、Professional Golf Tour of India、PGA Tour Latinoamerica、PGA Tour Canada などが行うツアーが この組織の統括の下に開催されているもので そうした競技に出場する選手は ワールド ランキングの対象になっている。なお、新たなプロゴルフツアーとなった LIV GOLF ツアーは 2022年に始まった時点で 世界最高峰の賞金を提供するツアーであるが(PGA ツアーと競合する形になったこともあり)ワールドゴルフランキングとの関係が確立されておらず、その試合結果が 当該ランキングに反映されないという状況が生まれている。
なお、大雑把な比較であるが 日本のツアーで 試合に出る権利を確保できる年間賞金獲得額 75位の選手は そのワールド ランキングが 1000位前後になる。従って、ツアープロとして生き残れる男子は 世界に 1000人、多く見ても 1500人程度しか居ないと言うことだ。
他方、女子の場合は 米国 LPGA 2015年のマネーランキング 75位の選手の年間賞金獲得総額が $167,890、そして、100位の選手で $69,680 となっているが、近年は 大きな大会の賞金額が大幅に増額され 男子との差が 小さくなってきたとも言える。日本の場合は その傾向が著しく 女子ツアーの方が試合週が多く 賞金獲得総額が男子を上回るような現象もみられるようになっている。因みに、2015年の日本の LPGA ツアーでは 50位の選手が ¥17,916,000、75位の選手が ¥8,128,000、100位になると ¥2,915,000 となっている。とは言え、ヨーロッパの女子ツアーの賞金総額は アメリカや日本の ほぼ 2/3 のスケールで 韓国の女子ツアーの賞金総額となると 1/3 - 1/4 程度の規模だから 純粋に賞金だけで生活できる女子選手は おおよそ 200 〜 300人と言うことになるだろう。
とは言え、トーナメントの賞金を中心に 契約金やレッスンなどからの収入を加えて トーナメント プロとしてゴルフをしている人は ゴルフ人口の増加と共に増え続け、現在 世界中に 数千人は 居るはずである。そうした中で活躍したトーナメント プロの名前を挙げたら 枚挙にいとまがないが その名前を見てみると ゴルフ発祥の地と言われる スコットランド(英国)より ゴルフの歴史は浅いものの ゴルフ人口とゴルフ場の数で英国を遥かに上回る(» 世界のゴルフ事情)アメリカの選手が目立つ。
♦ 世界のツアープロ|歴史と現状
本当の意味での トーナメントプロが出現したのは 20世紀に入ってからのことだが その最初のゴルファーと言えるのが ウォルター・へイガン (Walter Hagen: 1892-1969 » 発音) である。彼は 1910年、20年代に 最も活躍した プロゴルファーで 全米プロ 4年連続優勝という記録を含め、メジャー 11回の優勝記録保持者であり、タイガー・ウッズに その記録を破られるまでは(ボビー・ジョーンズの記録はやや異質なので除くとして)ジャック・二クラウス (Jack Nicklaus) の 18回に次いで歴代二位の記録を有していた。ただ、1934年から始まった マスターズには 優勝しておらず グランドスラムは 達成できなかった。
それでも、トーナメント プロとして生活出来るゴルファーが 何人も出現したのは 第二次世界大戦以降のことで、それは 欧米において中産階級の人口増加に伴ってゴルフ人口が増加する中、テレビの普及などマスメディアが台頭した結果、プロゴルファーのための競技の数と賞金が増加したことを 背景にしたものだった。そんな中、サム・スニード (Sam Snead)、ベン・ホーガン (Ben Hogan)、アーノルド・パーマー (Arnold Palmer)、ゲーリー・プレーヤー (Gary Player)、ジャック・ニクラウス (Jack Nicklaus) といった選手が活躍し ゴルフ人気を牽引した。
近年の大きな出来事としては パーシモンのドライバーの時代に活躍した偉大な ゴルファーで メジャー 18勝と言う不滅の記録を打ち立て 帝王と言われたジャック・ニクラウスが 2005年 7月 15日に 全英オープンの行われたセント アンドリュースの 18番を最後に トーナメント ゴルフに終止符を打った。また、タイガー・ウッズは 2008年の全米オープンに優勝して メジャー 14勝目を記録し ニクラウスに次ぐ 史上二人目のトリプル グランド スラマーになる 快挙を果たした。そのタイガー・ウッズも 私生活や健康のトラブルから その後は 競技に出場できることも少なくなり その復活が危ぶまれる時期もあったが、2019年のマスターズには 優勝を遂げ メジャー 11年ぶりとなる 15勝目を記録した。ニクラウスの 18勝を破る可能性が再び現実味を帯びており ゴルフ人気の再燃に 一役買うことが期待されている。 » メジャー優勝者の記録とグランドスラマー
日本人選手では 2004年に青木功選手、2005年には 岡本綾子選手、さらに、2010年には 尾崎将司選手が 世界ゴルフ殿堂(Golf Hall of Fame)入りを果たした。日本女子プロの先駆者 "チャコ" こと 樋口久子選手に加え 4人の日本人が世界ゴルフ殿堂入りを果たしている。最近では 世界のヒノキ舞台とも言える 米国ツアーで活躍する日本人選手の数も増えた。2009年のマスターズに 17歳で招待された石川遼選手が 2009年には日本の賞金王になり最年少記録を大幅に更新。そして、現在は 日本に戻り ツアーでの活躍は見られなくなったが、テレビのコメンテーターとして活躍している、PGA 複数回優勝の記録を持つ丸山茂樹選手、そして、2008年に PGAで初優勝を果たした 今田竜二選手など。しかし、何と言っても 一時は 世界ランキング 2位まで行った経験を持つ 松山英樹選手が世界を舞台に活躍しており、日本人選手がメージャーチャンピョンになる日がそう遠い将来のことではないような予感もする。
一方、LPGA では アメリカを主戦場に活躍する宮里藍選手が 2009年に米ツアー初優勝を記録し、翌年の 2010年の米ツアーでは 何と開幕から二連勝をして、短期間ではあったが世界ランキング 1位になり、日本のゴルフファンを驚かせた。また、日本女子ツアーは 2009年に横峯さくら選手、2013年に森田理香子選手、2017年には 鈴木愛選手が賞金王に輝いたが 近年は 韓国選手に押され気味だ。2015年には イ・ボミ選手が 年間 7勝で、賞金獲得総額 ¥230,497,057 という凄い記録を打ち立てた。日本の女子ツアーは その人気を背景に 年間獲得賞金額が 男子とほぼ同レベルになっており、ここ数年は 日本における ゴルフ人気を下支えするという大きな役割を果たしてきた。そうした中、2019年には 渋野日向子選手が 女子のメジャーの一つである AIG 全英女子オープンに優勝して (Smiling Cinderella というニックネームも生まれ) その笑顔と共に話題になった。