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素材のお話|各種材料の物性と特徴
昔は 考えられなかったような 大型ヘッドのドライバーから 右の写真のような 色々な素材を使った複雑な形状のパターまで 最近のゴルフクラブには 様々な工夫がなされているが そうしたデザインのクラブを作るために使われる素材の種類は 極めて多岐に亘るようになっている。素材に係わる知識も クラブの特徴や使い方を理解する上で必要なものだが 以下は そうした素材の中から 代表的なものについて その特徴を簡単に説明したものである。
♦ 各種金属
軟鉄 (Mild Steel):
説明するまでもなく、クラブ作りには極めて良く使われる素材である。鋳造(キャスト)アイアンに使われる炭素鋼は 炭素含有量が 2% - 4% で硬いが、軟鉄は炭素の量が 0.1% - 0.3% と低く、柔らかく、鍛造の(フォージド)アイアンや削りだしのパターの材料に使われる。伝統的に 鍛造アイアンは 錆を防ぐためにクロム (Cr) 鍍金が施されているが より柔らかな感触、また、高級感を出すといった目的で ニッケル鍍金や 黒染め(四三酸化鉄皮膜)をしたクラブが多数出回っている。ステンレス鋼 (Stainless Steels):
17-4 PH ステンレス - SUS 630 (17% Cr, 4% Ni) は ピン(Ping)が最初に使った素材で、キャビティーバックの鋳造アイアンに広く使われている。一方、18-8 ステンレス - SUS 304 (18% Cr, 8% Ni) もアイアンに広く使われているステンレス鋼で SUS 630 よりも柔らかい感触が得られ、曲げることも出来る素材だ。また、最近では C450 ステンレス鋼 (Super Steel などとも呼ばれる) が薄いクラブフェースなどの製造に使われている。加えて、最新のステンレス素材である 15-5 PH ステンレス (15% Cr, 5% Ni) は 鋳造メタルウッドの製造に適した素材特性があり、以前までのスチール メタルウッドの限界を越え、ビッグサイズのヘッドの製造も可能で、設計の仕方によってはチタンヘッドの性能を上回る可能性のある素材だとされている。チタン合金 (Titanium Alloys):
主に、ドライバーのヘッドに使われる素材である。軽量で強度のある合金を作ることができ、軍需用に良く用いられたという背景がある。純粋なチタン (Ti) は むしろ 柔らかな素材で、そのままでは ゴルフクラブの素材として適したものではない。比重は 4.42 と鉄の 7.86 よりもはるかに軽い。ただし、アルミニウムの比重は ほぼ 2.7 ということだから 決してゴルフクラブの素材として使われる最も軽い金属という訳ではない。基本的には、6-4 チタンとベータチタンと呼ばれる 2種類のタイプの合金として使われる。6-4 チタンは、6% のアルミ (Al) と 4% のバナジウム (Va) からなり、一方のベータチタンは (15% Va, 3% Cr, 3% Al, 3% Ni) という構成で 鍛造クラブに利用できる。アルミニウム合金 (Alminum Alloys):
純粋なアルミニウムの形で利用されることは 殆どないが、その比重が 2.7 と極めて軽く、また、価格も 然程 高くないため、様々な用途でアルミ合金が使われている。代表的なアプリケーションには 軽量という特徴を活かして 7075-6A アルミ合金 (Al + Pb 4%-6%, Mg 2%-3%) が ドライバー・ヘッドのデザインに応用されるが、強度と耐食性があり 鍛造も出来る 6061 アルミ合金なども良く使われる。アルミの特徴である 柔らかな感触を活かしたパター・ヘッド、主に、マレット・タイプのパターへの応用も 代表的なアルミのアプリケーションの一つである。タングステン (Tungsten):
タングステン (W) は 比重が 19.5 と鉄の約 2.5倍、チタンの約4倍の比重で、最近はクラブヘッドの重心位置のコントロールに用いられている。また、タングステンはボールにも使われており、慣性モーメントを変化させる目的で利用されている。中心にコアとして入れれば、慣性モーメントが小さくなり回転しやすく、回転がすぐなくなる構造になり、逆に、外側のレイヤーなどに粉末として利用すれば逆の特性を持つボールが作れることになる。その他金属:
その他の金属では 銅 (Cu) が比較的良く使われる。銅とベリリウムの合金 (Cu + 1% - 2.5% Be) で ベリリウム・カッパーと呼ばれる金属が ステンレス鋼より 6-7% 重く、ウェッジなどに使われる。また、銅と錫 (Sn) の合金である ブロンズ(青銅)や 銅と亜鉛 (Zn) の合金のブラス(黄銅、または、真鍮)も パターのヘッドなどに使われることがある。一方、アイアンのメッキには クロム (Cr) やニッケル (Ni) といった素材がよく使われる。♦ コンポジット素材
主に、シャフトの材料となるが、スチール シャフトに比べ 軽量でキックポイントやトルクなどで幅広いスペックのものを作ることができる。最近では 技術的にもばらつきがなくなってきており、強度、トルク、復元性などにおいて狙った特性が出せるので 広く利用されるようになっている。最も 一般的なものは エポキシベースのものにセラミック系(炭素、ガラス、ボロン)繊維をマトリックス(格子)状に組み込んだものである。生産技術的には 比較的、自動化を進めにくい面があり 生産コストも スチール シャフトに比べで高い。また、キャディーバックの角などで傷を付けないこと、夏場に車のトランクなど高温の場所に長時間放置しない(劣化防止)ことなど、扱いに注意をする必要もある素材だ。
♦ ゴムとエラストマー
グリップは、天然ゴムのコンパウンドで作られたものが主流であった。コンパウンドとは 硬さなど適切な感触を出すために 数種類の天然ゴムを混ぜたもの。一方、近年、グリップの分野で EPDM など、エラストマーが良く利用されるようになっている。エラストマーとは ゴム状の弾性体のことで 広義には ゴムもエラストマーの一員であり、プラスチック 即ち 樹脂であっても ゴムのような弾性体であれば エラストマーだ。 ボール表面の素材として使われるようになったエラストマーは ウレタンエラストマーなどの熱可塑性エラストマー(TPE)で TPU や TSU と呼ばれるものである。近年は ウレタンカバーの上のコーティング材の工夫による性能アップを狙った開発も進んでいる。
♦ その他の素材
樹脂では ストロノミックと呼ばれる衝撃を良く吸収する素材がパターのフェース の材料として(最初は 初期のオデッセイ パターの ロッシーに)使われるようになった。その後、硬さや衝撃吸収特性などの異なる様々な樹脂(もしくは その組合せ)が パターフェースのインサートとして使われるようになった。例えば、オデッセイ ホワイト アイス Sabertooth では インサートの内層に 高弾性のエラストマーコアを使用し、外層には ソフトフィーリングを出せる ウレタン樹脂を採用するなどといった応用が見られる。また、テーラーメイドのパターなどのように パターフェースのインサートの溝に 柔らかな樹脂を埋め込んで より望ましい転がりと打感を追及したモデルもある。さらに、樹脂と金属を組み合わせたフェース インサートが樹脂の柔らかさと金属のフィードバック感の両方を追求する目的で使われるなど、様々なアイデアで多種多様な素材が使われるようになっている。
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