Corporate Revolution

はじめに


技術の進歩によって我々の生活は豊かになった。便利な家電製品が世の中には溢れ、インターネット、携帯、PC のない生活は あり得ないほどになっている。そんな技術革新が生活を豊かにしてくれたことは 間違いない。しかし、一方では 格差、貧困、ワーキングプア―といった社会問題が深刻さを増している。その原因は 一体何だろう。コーポレート・レボリューション (Corporate Revolution) は そんな社会問題が生まれた根本的な原因 即ち 社会の仕組みについて考え、格差、貧困、ワーキングプア―などの問題を解決するための新しい社会の仕組みを提案するものだ。

我々の殆どは 民間企業や役所などで働く 所謂 給与所得者になった。そうした社会の中で 中心的な存在が「会社」である。そんな会社の多くは 株式会社 (コーポレーション) であるが、その仕組みは 所有 (株主) と経営 (会社役員) の分離を可能にし 経営の専門家が株主の利益の最大化を図るというルールの下に 効率良く機能し 現代社会の巨大な富を生む原動力の役割を果たしてきた。ただ、一方では 経営者の利益至上主義が 拡大する富の偏在、貧富の差という問題を生んだとも言える。利潤を増大させる機会を追求するあまりに 投資家は 残酷な行動を取る傾向があり、より安価な労働力が より多くの利益を生むし、労働者階級の生活水準の低下は 自分達の問題ではないという考え方をする資本家も 少なくない。

workersコーポレーションが生む富の配分は 労働者に対する給与や賃金という形で行われてきたが それには 常に 疑問視されるべき側面があった。その立場の弱さ故に 多くの労働者の待遇は 劣悪で 結局は 資本家に 搾取される結果になったことである。そうした中、労働者の利益を守るために 労働組合が結成され 集団交渉権 また 政治への影響力をも確保することで 労働条件の改善がなされたが 非生産的な側面もあり それが就業機会の損失や非正規雇用の増大という皮肉な結果を生んだのも事実だ。また、貧困と富の再配分という観点から 税と福祉の問題が論じられ 日本では 社会保障と税の一体改革というようなことが国の立法府である国会の場で議題になってきた。税と福祉制度が 富の再配分という観点から 一定の役割を担う必要はあろうが、そうした発想で問題が解決されるとは 到底思えない 現実があることに目を向けなければならない。現存する税の概念の下で 富の再配分にだけ国が関与しても 富の構築と分配は 極めて 非生産的で 非効率にならざるを得ない。

E コーポレーション(革新的アイデア)


アイデア我々が直視すべき 問題点は (1) 労働力の有効活用、(2) 効率的でフェアーな富の分配 という二点。ただ、この二点は 我々が抱える問題であると同時に チャンスでもある。そんな状況に鑑み 対応策として提案するのが E コーポレーション (Class E Corporation) と言う新しい会社形態と新税制である。法人と投資家に対する税制を少し変えることで 富の構築と分配がより効率良く フェアーに行われるようにする - そんな提案だ。

E コーポレーションは 一見 今までの株式会社と何ら変わる点はないが、株主がその営業利益の一部(15% 提案)を全ての従業員に均等にボーナスの一時金という形で還元することに合意する会社、言い換えるなら イーコール プロフィット シェアリング(以下 EPS)と言う利益配分制度に 100% コミットする会社である。正規、非正規を差別しないのは勿論のこと、パート・タイムの従業員も その労働時間に応じて 恩恵に被ることが出来るようにするものだ。(但し、EPS ボーナスが ベースの年収より多くなることはなく 所得が EPS ボーナスによって 2倍以上にはならないなどの シーリングを設ける必要はあるだろう。)見方によっては 株主が 従業員に 税金を払うようなシステムだが、毎年、安定した従業員の収入を保証するようなシステムではなく 利益の出ない企業の従業員は 何の恩恵も被れない という厳しい側面もある。

一方、見返りとして E コーポレーションには 特別な税法上の恩典が与えられる。例えば、その株主は 利益の一部を 企業が従業員に(税金の感覚で)ボーナスとして支払う見返りとして キャピタルゲイン(税率 15%~20%)の非課税措置という税法上の恩典が受けられるようにする。もしくは、法人税の減額(例えば、EPS ボーナスの 1/2 相当のタックス・クレジット)のような恩典でも良いだろう。ただし、E コーポレーションの資格は それが本当に 従業員の所得水準のアップに資すること、また、EPS ボーナスのコストと減税額とのバランスも勘案し認められるべきで、ただ単に、税法上の優遇措置のための E コーポレーション申請は 却下されるべきである。

ご存知のように、プロフィット・シェアという制度は 欧米では 優秀な経営者や労働者を確保し インセンティブを与えるために 良くオファーされることのある制度である。しかし、それは 少数のエリート社員と 一般社員の所得差を広げる要因の一つにもなったという性格のものである。一方、EPS は プロフィット・シェアとは言え、全く異なるもので、一部のエリート社員と一般社員の所得差を相対的に縮小させることの出来るものである。EPS プランの効果は 検証されたことがなく 不確実と言わざるを得ないが、これが 株主、経営者、従業員にとって 利益の増大と言う共通の目的を与えるもので 企業の業績改善という観点から大きな効果を生む可能性は 高いはずだ。労働者のモチベーションと生産性が向上し、業績が改善されれば、分配される利益の総額が大きくなる訳だから、株主、経営者、従業員のすべてが ウィナーになれる仕組みである。

もし、この労働者のモチベーションと生産性の向上による業績の改善が 費用対効果の観点から 株主にとって プラスの結果を生むものであれば EPS プランは 税法上の考慮をしなくとも良いものであるが、現時点では その点が不透明なので 今回の提案では 営業利益の一定の割合 (15%) を従業員に還元することに対して、特別な税法上の恩典を与えようと言う提案である。EPS プランの下で働く従業員のモチベーションが高くなるのは 想像に難くないが、それによって業績が好転することも 当然 起こり得ることである。こうした株主と従業員の関係は 資本主義経済の歴史の中でも 起きたことのない革命的な出来事だと言えよう。

アイデアの応用


世界最大の小売企業であるウォルマート (Walmart) は 約230万人の従業員を擁し ここ数年 ざっと 売上 4800億ドル(50兆円以上)営業利益 250億ドルという業績を残している。その営業利益の 15% を EPS プランで従業員のボーナスに充てると 一人当たりのボーナスは $1,630 になる。もし、あなたがウォルマートの株主で、E コーポレーションという選択肢があれば すぐに EPS プランの業績への影響と税法上の恩典(例えば、キャピタルゲインの非課税措置)と言うことを考えるだろう。EPS プランによって営業利益が直ぐに 15% 以上アップすると考えれば、税制上の優遇がなくとも E コーポレーションへの転換を希望するだろうが、直感的には 何らかの改善は見られたとしても 15% 以上の業績改善は 疑問だと考えるのが普通だし、かなり悲観的に考える人も 少なくないだろう。しかし、悲観的な考え方の人にとっても 税法上の恩典は 魅力的なオファーなはずで EPS ボーナスを支払ってでも その恩典を受けるべきと考える人は 少なくないだろう。


E コーポレーションになり、EPS プランを採用する企業にとって その業績改善が ベンチマークとも言える 営業利益で 15% アップの水準に達するには 2~3年は掛かるかも知れないが、一度、そのレベルに達すれば それを維持する可能性は高いし、それ以上に伸びることさえ そう難しいことでは ないだろう。ウォルマートが EPS プランを採用しても 業績が全く改善しないと考える人は まず居ないだろう。ただ、どの位の人が その 250億ドルの営業利益が 290億ドル以上になり、その水準以上に留まると考えるかは不透明である。営業利益が 100億ドル以上アップし 350億ドルにまでなっても不思議ではないと考える人も居るかも知れないが そう考える人は そう多くはないだろう。ただ、もしそうなれば、利益は 250億ドルから 315億ドルにまで増える訳で 株価は大幅に上昇するだろうし、その株を売って利益を出した株主は(キャピタルゲインの非課税措置が受けられれば)税金を払う必要がないのだから この上ない結果であろう。

仮に、営業利益が 100億ドル アップし 350億ドルにまでなれば 従業員一人当たりのボーナスは $2,283、さらに、倍増し 500億ドルにまで増えれば 従業員一人当たりのボーナスは $3,261 にまでなり、そのボーナスの額は 多くの従業員にとって 年収の10% 以上の額に相当するものになる。そうした従業員は 自分達の生活水準が 自分達の努力によって改善できるのだと 生まれて初めて 実感することになるだろう。

加えて、EPS プランは ウォルマートのような巨大企業の場合 工夫次第で さらに その効果を大きくする余地がある。例えば、Eastern, Central, Mountain, Pacific と企業の業績を地域別に出して それぞれの営業利益をベースに ボーナスを支払うことにする。そして、地域間で業績を競わせるのである。一位になった地域の従業員には 営業利益の 15% のプロフィット・シェアー・ボーナスに加え、優勝報奨金として さらに 5% の上乗せがなされ 営業利益の 20% がボーナスとして支払われると言った具合である。労働者に対する報償を増やせば そのコスト以上に業績が改善されると株主が考えるようになれば 素晴らしいことである。地域別というアイデアに拘る必要はないが、従業員にとって分かり易い区分けで 自分たちの努力が目に見える成果となって現れる仕組みにすることが極めて重要であろう。自分の会社(場合によっては、所属地域、事業部など)に対する思い入れが大きくなれば 自分の家族を思うような感情さえ生まれ、企業にとって大きなコストである 離職率なども 自然と低く抑えることが出来るだろう。EPS によって富の分配の概念が変わることは間違いないが、EPS のやり方を工夫することで その効果には差が出るだろうから EPS プランを導入するにあたっては 企業サイドの制度とマネジメントの手法は 勿論のこと 税制面での配慮においても 十分な研究がなされるべきである。

ただ EPS プランの効果は 産業間で かなり異なったものになると考えられる。小売業や外食産業などは 他に比べ(従業員一人当たりの利益額が小さいので)効果が出難いと考えるが、小売業、外食産業のような産業に従事する人の数が多いこと、そして、そこで働く人の所得が比較的低いことを考えると E コーポレーションが そうした産業で受け入れられるようになることに 意味があると言える。自分達の努力で 自分の働く会社の利益が増え、その結果、間違いなく自分達の生活水準が良くなるという希望をもって働くことが出来る人の数が多くなれば、小売業、外食産業でも 目に見える成果を出す企業が多数出現する可能性は十分あるだろう。小売業や外食産業で成功する企業が数多く出れば、他の産業においては それ以上の成果が期待できるだろう。結果として、社会全体の生産性が向上し、より多くの富が作り出されることになるが、加えて、その富をよりフェアーに分配する E コーポレーションと言う制度がある訳だから、貧しい人の数は 自然と減少するはずだ。EPS ボーナスによって 年収が 2割とか 3割(特に 低所得階層の給与所得者は)場合によっては それ以上 増えるケースも 数多く見られるようになるだろう。

未来への挑戦


増税で福祉を充実させると言う発想で 富を再配分しようとしても 勤労意欲を低下させるだけである。ノルウェーで提案されているベーシックインカム(最低所得保障)のような構想もあるようだが、政治家は E コーポレーションのような制度で 富の分配だけでなく より多くの富の創造を強く意識した制度の構築を目指すべきである。そして、現在の税制を少し変えることで それが可能になることに気付くべきだろう。企業が生み出す富と利潤をより大きくすることで 税収の増加が図れることもあるが、加えて、EPS の制度は 景気の底上げをする公共投資的な側面があることにも注目して欲しい。つまり、EPS によって民間の所得が伸び、消費が増えれば、景気刺激策として行っている(非効率な)公共投資を削減できるから歳出も削減でき、財政再建にも貢献する 一石三鳥、四鳥の効果が期待できるものだ。労働者階級からの所得税、消費税などの増収も期待できるが、企業の業績が改善されれば、一部の(例えば、キャピタルゲイン)の税収は減少するだろうが、それを大幅に上回る様々な税収増が期待できよう。勿論、そうした政策に対する国民の賛同は 容易に得られるはずである。E コーポレーションと EPS プランが 現在の資本主義の問題点を全て解決してくれる訳ではないが、少なくとも、低所得者の痛みを和らげ、財政再建に資する効果が期待できるはずだ。このコーポレート・レボリューションは 全ての人達を勝者にし、この世を 少しでも 住み良い所にしてくれる 救世主になり得るものである。

法人資本主義の下で 経営者は 株主の利益を守る義務があるから 人件費の上昇は考え難いのが普通だろうが EPS のボーナスは 今までの人件費の概念とは 全く異なるものである。日本の場合は 元々 月給 + 年 2回のボーナスという給与体系が定着しているから 通常のボーナスを応分に減らす企業が出てくれば さしたる変化にはならないと言う考え方にもなろうが、そうではなく、利益の出ている企業には 利益に応じて 税制面から人件費を増やすことを促すのが E コーポレーションの制度である。EPS ボーナスと言う形で 人件費を増やすことが 株主にとってのメリットになるよう税制を変えたのだから 根本的に 考え方を変えなければならない。その結果が株主にとって悪い結果になるとすれば E コーポレーションのステータスを捨て(例えば 3年後に)普通の会社に戻ることも出来るようにすれば 株主にとって E コーポレーションの制度を試してみる価値は より高くなるはずだ。利益を出すために 人件費を抑えることしか考えない経営者に 株主が別の発想でベストな方法を促すことを E コーポレーションの税制がサポートするという仕組みである。他にも 色々考えなければならないことはあるが(例えば、均等割のボーナスは 不公平という考え方もあろうが、均等だからプラス面が多いという考え方も)まずは E コーポレーションのような全く新しい発想で社会を良くすることを考えてみる。そんな努力が必要な局面にあるのではないだろうか。社会、経済のグローバル化が進む中で、健全な民主主義が機能し、自由と平等の理念に根付いた平和で安全な社会を守るためには 質の高い教育をより多くの国民が受けられる社会を実現させる必要があり、そのためには 格差の是正、国民の生活水準の底上げが急務である。

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